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書簡

胸締め付けられるおとぎの恋

どんなちいさな命も尊び、愛することのできる少女・イリスと、ひょんなことから彼女と手紙のやり取りをすることになった騎士・フェリクスの物語です。 イリスは心優しく聡明で、茶会のみんなが嫌がるシャクトリムシだってへっちゃら。どころかそっと逃してやるのです。 物語の構成の隙のなさ、情景が浮かぶようなうつくしい文章、イリス視点のどこまでも優しい世界への眼差し、フェリクスの愛情深さ。その全てが水のように溶け合い、ふくらみ、まるでお伽話を読んでいるような心地になります。 どうして彼らが惹かれ合うのかを、不用意に愛や恋といった単語を用いず、嵐のような愛憎を挟むこともせず、おだやかな海のような物語全体で説得力を持たせている手腕は、実に見事です。 それでいて、間違いなくこのお話はふたりの「恋物語」なのです。せつなくなるほど。 きっと物語の結末にたどり着いたとき、登場人物たちとの別れが寂しくなるし、彼らみんなの幸せを願うほど、いとおしくなると思います。 フェリクスの過去は本作ではあまり書かれませんが、番外編もありますので、気になった方はどうぞ。

5.0
3
バケタ

白金のイヴは四大元素を従える

◇繊細■精緻□世界の扉◆

繊細な筆致、精緻な描写、心が開く世界の扉。 さり気ない日々、何気ない出来事、日常からちょっと外れた事件のはずが――。 丁寧な事実の積み上げが、やがて一気に拡がる作品世界を支えています。 タイトルの意味が明かされると同時に、紙面の裏で息づく生命の営み、これが実感を伴って迫ります。 繋がる事実。 絡まる想い。 積み上げ縮めるその距離を。 運命の気まぐれが弄び、 心の迷いが惑わせる。 波乱を呼ぶ過去。 迷いを呼ぶ情。 怒り、涙、すれ違い。 悲嘆に暮れた過去が在り、 胸を圧する事実が迫り、 行く手に難関が立ち塞ぐとも。 されど胸の奥深く、 心を呼ぶ糸、撚り編み上げて、 徐々に織りなす、絆のかたち。 森の外、緑の向こう、 風が吹き抜け、火が灯る。 息吹く命とその理由、 心と心が揺れ動き、 時には離れ、 時に寄り添い、 想い、 問いかけ、 情を育てて、 慕う強さと、 想う優しさ、 意志の力が変えるもの。 森深く住まう少女が持つ秘密。 迷い込む貴族の中に芽吹く熱。 穏やかな日々、期せぬ再会、揺れる心とイヴの意味。 開ける世界と起伏の情が、 少女を導く、その先は。 『白金のイヴは四大元素を従える』 心の行方に在るものは。

5.0
0
中村尚裕

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