ユウくんとサヤちゃんは片想い
ワンルームのアパートに暮らす大学生、裕也の部屋には幼い頃からの友達である小夜子がいます。同棲するような関係でもないようなのに、何故か同じ部屋に住んでいる描写がなされており、日常的に愚痴や相談の相手になってくれているという、謎のポジションです。 どういう状況なのだろうと不可解に思いながらも、お互いがお互いを大切にしていることは伝わってきます。 シェアハウスでしょうか? いえ、恋人でもない男女がシェアハウスするにはワンルームは狭すぎる。 小夜子は裕也を誰にも取られないように的外れな恋のアドバイスをし、裕也は裕也で小夜子に恋をしている。 この二人、早く付き合ってしまえば良いのにとやきもきしながら読み進めました。 これが普通の恋であるならば。 彼らは永遠に片想いなのでしょうか。それは幸せなことなのか。きっと彼らにとっては、今の関係を続けることが一番良いのではないかと、切ない気持ちにさせられました。とても不思議なお話です。
- 作品更新日:2022/6/2
- 投稿日:2022/6/12
活動停止。~負け犬達の道化芝居~(再々構築版)
親への反発心、うわべだけの友情。 このくらいの年齢の子は発展途上で、様々な感情を持ち合わせているのではないでしょうか。主人公の持つ厭世観というか、鬱屈した諦めにも似たものが伝わってきました。 友人が自分のことを「親友」と思っているのか、本音で話しているのか演じているのではないかなど、他人の気持ちはなかなかわからないものです。 自身の十代のころを思い起こし、若干苦い気持ちに浸りました。面白いという表現は不適切かもしれませんが、良い作品です。
- 作品更新日:2022/2/11
- 投稿日:2022/6/13
かくしごと
ルームシェアしているふたりのかくしごと。 余命幾許もない主人公は幼馴染にそれを隠している。気を遣わせたくないのでしょうね。 お互いの気持ち、気遣いなどが交錯し、なんとも言えない気持ちになりました。 現実問題として難しいかもしれませんが、主人公の病魔が心を蝕むことなく、最後の日までふたりは今のまま日常を過ごせたら、と願います。
- 作品更新日:2022/5/1
- 投稿日:2022/6/13
貴方の復讐、お手伝い致します
人を呪わば穴二つという言葉があります。 主人公はある人物に復讐をしかけようと、怪しげな男と契約する為にボロい店のドアをくぐります。 背景描写がよいですね。 閉店の看板ばかりが並ぶ道にあるボロい店……内部は散らかり点滅する電球。古びた異臭がしてきそうな店が脳裏に浮かびます。 そして個性的な風貌の、店主と思われる男性には名前がない。 物腰柔らかなのに、どうにもうさん臭さが目立ちます。一体この物語はどうなっていくのかと、わくわくさせてくれます。 主人公は冒頭より憤っており、ある人物を殺したいほど恨んでいる。復讐の契約にどんな対価が必要なのかわからないうえに、どうなっても構わないと約束させられるのは正直躊躇します。それでも契約してしまった主人公の恨みは、計り知れません。 けれどせめて主人公は誰かに復讐を依頼するのではなく、自分自身の手で実行すべきだった。 そうすれば取り返しもついたはずなのですが…… 人を呪わば穴二つ。主人公は自分の短慮により、大きすぎる代償を支払うことになります。 人の心の醜さ、弱さ、疑心暗鬼。それにつけこむ男性の存在がうまく融合し、後味の悪いお話に仕上げてくれています。
- 作品更新日:2021/3/16
- 投稿日:2022/6/5
酒場で絡んできた女魔法使いがウザすぎる
異世界ものですね。 尊い使命やら大きな決意やらのない、軽いタッチで描かれる物語は、日常に疲れている人の心をリフレッシュさせてくれそうです。 酒場から始まる酔っ払いの魔法使いとの出会い。ウザ絡みする魔法使いのノリは非常に軽いですが、どうやらパーティーを追放されてしまってお困りなのでしょうか。 冒険者である主人公と一緒に冒険するのを、まるで愛の告白のように受け取る様がなんとも可愛らしいです。 伝説の剣を抜きに行くエピソードも、予想外の展開にくすっとさせてくれます。なんだかんだ良いコンビですね。終始コミカルな文体で、楽しく拝読いたしました。 今後もこの二人は良い関係を築きながら、楽しい冒険を繰り広げて欲しいものです。
- 作品更新日:2021/3/9
- 投稿日:2022/6/5
きみのひとみは恋してた〜言葉遊びから告白へ〜
夏休みのがらんとした教室で二人きり、ひとみ先輩と主人公が吹奏楽部の練習をするでもなく、話に花を咲かせているところから始まる物語。 異性の先輩と二人きり、夏休みの教室……何か素敵なことが起こりそうな予感がして仕方ありません。二人は同じ楽器を担当していて、会話から良い関係性が伺えます。 けれど先輩は高校最後のコンクールで、二人が同じ部活にいられるのもあとわずか。会話の端々に、何かを言いたくて言えない雰囲気が読み取れます。いいですねこういうじれったさ。 タイトルなどから最終的な方向性は予想できますが、そこに至るまでのプロセスがコミカルかつ軽やかに描かれており、非常に読みやすくストーリーに引き込まれます。 先輩のフルネームが出てきた時に、さすがにその名づけはどうなのだろうと疑問を抱きましたが、なるほどちゃんと理由がありました。 名前の言葉遊びは大喜利のようで、次は何が出てくるんだろうと楽しく想像しながら読ませていただきました。 素敵な青春の一ページを堪能いたしました。ありがとうございます。
- 作品更新日:2021/2/6
- 投稿日:2022/6/12
心中ごっこ
死にたがりの親友と、それに付き合わされる主人公の物語。 明確な理由もなく死にたがる親友、ぼんやりとした希死念慮に囚われているのか、単に今というこの時間を止めてしまいたいだけなのか。 作中には登場人物の具体的な年代は書かれていないものの、作品のトップに「中学生の女の子」とあります。まだまだ未成熟な精神年齢。友達以上恋人未満の、軽い共依存的な関係性を感じ取りました。 刹那的な彼女たちの、何気ない日常に潜む「死」。 一緒に死にたいと言った主人公は、どこまで本気だったのか。それが単なる「ごっこ」だったとしても、彼女たちにとってはお互いの気持ちが重なり合うことが大切なのかもしれません。本気である必要はない。案外心中とは、そんなものなのかも。 個人の意見として、彼女たちには今後も二人で様々な感情を共有して欲しいと願います。
- 作品更新日:2022/12/11
- 投稿日:2022/6/19
転性の冒険者~異性転換できちゃう私は、夢にまで見た異世界で両得ムーブ。旅のお供は愛すべき美少女多数! 男でハーレム? 女で百合? いやいや、どっちもいただきです!~
転生前、同性であることがネックで二度の失恋を経験したことなどから、男になりたいと願った主人公の冒険譚。 第一章の最後まで読ませていただいたうえでの感想です。 神様とのやりとりにより、どうやら主人公は不完全な状態で転生してしまったようですね。女の子に戻ってしまうかもしれないという不安要素を抱えた主人公。しかし読者としては面白い要素です。主人公は望むとおりにハーレムを作ることが出来るのでしょうか。前世では報われなかった主人公を応援したくなります。 行きがかり上可愛い妹と共に騎士団へ入団することになった主人公、しかし出かける間際の両親の反応から、これからの展開が前途多難なものであるようにも感じました。 第一章後半での魔術師との闘いのシーンは勢いがあり展開も軽快です。 次への引きに優れており、先がとても気になります。また全体的にライトな文体で、楽しんで読み進めることが出来ました。続きも楽しみにしております。
- 作品更新日:2023/3/8
- 投稿日:2022/6/19
真夜中の侍たち
何故か悪がまかり通っている理不尽な時代。 冒頭殺人鬼に妻子を殺されたお爺さんが仇を討ってくれと頼むのを断る散切りの男。彼が空を見るシーンが、何かの予感を感じさせます。 殺人鬼は警察に果たし状なるものを寄越し、己の存在を誇示し楽しんでいる。標的である家に出向いた際の殺人鬼からは、なかなかにコミカルな狂気が伺えます。 しかし事前に情報を得ていた散切りによって―― 彼は今後も弱き者を彼なりの方法で助けていくのでしょうか。 散切りがラストで北極星をどのような思いで見つめていたのか、とても気になる終わり方でした。
- 作品更新日:2022/3/27
- 投稿日:2022/6/21
鯛から逃げたい
冒頭の先輩との和やかな居酒屋でのやりとりは、美味しそうな雰囲気が伝わってきます。しかしそれはあくまでも前菜であり、主人公がじわじわと追い詰められていく感じが興味深いです。 既に調理された鯛が望んでここにやってきたのか、……鯛が望んで食卓に並ぶでしょうか。食物連鎖の中に組み込まれているとは言え、自ら選んでここにいるわけではない。 先輩の言い回しが一風変わっており、面白いです。一見して陽気な先輩の様子の中に、底知れぬ怒りを感じました。先輩がどこまで本気なのかわからず、主人公の未来はとても不安定に思えます。そんな曖昧な恐怖が良い味を出し、物語を美味しく調理しています。 おばけの出てこないホラーと伺っていましたが、おばけよりも人の心が恐ろしい。そう感じました。
- 作品更新日:2021/1/21
- 投稿日:2022/6/21