オノカム・這クク・・ニエト
パソコンを使っていて、何が怖いですか? データの保存失敗? 暗い画面に映る自分? ああ、ブルースクリーンなんて……。 どれも怖いですよね。 そんな中で、私が特に怖いと思うのは『文字化け』です。 デタラメな文字列は、見ただけでドキッとします。 これは動画配信を行っている少女のパソコンにあらわれた『奇妙な文字』にまつわるお話です。 少女のパソコン画面に何度もあらわれる、自分以外には見えない文字。 何をやっても消えないそれに少女が消耗していく様子に、じわりじわりと怖さが煽られます。 そしてパソコンという身近なものに対する猜疑心や恐怖心もまた、じわりじわり……。 コンピューターウイルスのみならず、ちょっとした設定ミスでもあらわれる『文字化け』という現象は、現代人なら誰しも一度は見たことがあるでしょう。 そして、その文字化けに底知れない恐怖を感じる人もいるはず。 およそ8000字かけて、まるで『ここから都市伝説が始まるのでは』と感じるような怖さを、私は覚えました。 そして呪いとは知らず伝達してゆくものですから、お手元の機械にはお気をつけください。
- 作品更新日:2019/10/12
- 投稿日:2021/7/25
【全48話】ゲル状生物に生まれ、這いずり泥を啜って生きた物語 / 続章【全534話】戦百華 / +外伝と真焉
胸が熱くなり心揺さぶられる、群像劇ダークファンタジー戦記。 そして種族の垣根を超えた親子の愛情を知る物語です。 ゲル状の生物に人外転生した男主人公。 彼は終始一貫、人化はしません。 動きは鈍く、発声もできず、とても弱く生まれた魔物です。 1作目はめちゃくちゃざっくりいうと、主人公が『清廊族』という人間に虐げられている『異種族の少女』とともに生きる話です。 こちらには百合要素がないので、苦手な方でも安心して読めると思います。 弱肉強食の世界も、その場にいるようなジメッとした空気感も、もちろん登場人物も、みんな魅力的でした。 ゲル状の特性を活かして苦境に負けず、試行錯誤して生きる姿には応援する気持ちが強くなります。 魔物が少女に対して少しずつ愛情を覚えて、甲斐甲斐しく世話をする姿は愛おしくて穏やかな気持ちになりました。 2作目は『清廊族の少女』を中心に、より激しい戦記になります。 色濃い百合も数多く含まれます。 読み進めるたび、つらく苦しいのにみんなが愛おしくなり涙が溢れ出ました。 過去も後悔も葛藤も全部ひっくるめて立ち止まることなく歩み続ける女性たちの姿はとても眩しいです。 伏線や魅せ方も上手く、胸が熱くなる活劇、愛があり、世界観も丁寧に作られています。 群像劇ならではの人物描写のおかげで、よりこの世界に没入できました。 作品のあらすじからはどんな物語か読み取りにくいですが、私は丁寧に作り上げられる世界観に惹きつけられました。 ◆ すでに「小説家になろう」では2つとも完結しています。 現在は『加筆修正・合併版』として「カクヨム」で連載中です。 話の軸となる主人公は変わりますが、ぜひ続けて読んでほしいです。 とても大切なものが深く繋がってるニコイチ作品です。 ・1作目 全48話(約12万字) 「ゲル状生物に生まれ、這いずり泥を啜って生きた物語」 ・2作目 第六幕が連載中(現在約130万字) 「戦禍の大地に咲く百華」 個人的には『異種族間交流』『人外転生』『百合』『呪い』『葛藤』『暗躍』『ジャイアントキリング』といったキーワードがお好きな方にオススメしたいです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ※ここから下は、各作品への感想を交えたレビューです。 お時間のある方はぜひお読みください。 とても長いですが、作品への愛を込めています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼1作目「ゲル状生物に生まれ、這いずり泥を啜って生きた物語」 序盤は人外転生した男主人公が『ゲル状生物』としての特性を理解し、どのようにして生きていくのかという過程がしっかりと描かれます。 この物語で大切なことは『主人公が一切人化しない』ということです。彼は言葉を介したコミュニケーションができません。 そして人間に虐げられる『清廊族』の少女と出逢ってからが本番です。 ここまではじっくり下ごしらえをしていたのです。 凄惨な過去を持つ少女はゲル状生物を『母さん』と呼び慕い、彼もまた絆されるようにして少女に愛情をそそいでいきます。 二人は会話こそできないものの、互いを思いやり穏やかな日々を過ごします。 しかし彼らの住処に、強大な力を持つ人間たちがやってきたことで物語は急転します。 ◆ 文庫本1冊ほどの文量なので、夜のお供にいかがでしょうか。 部屋を少し暗くして、ジメッとした洞窟の中にいるような気分で読んでみると面白いかもしれません。 もしくは、夜空が綺麗な日でも良いかもしれません。 私は寝る前に少しだけ読もう……と、深夜に手を出したため眠れませんでした。あれは雨の日で、物語とどこかシンクロするような環境だったことをよく覚えています。 あと私はこういう異種族間の愛情を垣間見られる物語がとても好きです。 ━━━━━━━━━━ ▼2作目「戦禍の大地に咲く百華」 物語の中心となる『清廊族』は、自然や魔物たちと共生する長命な種族です。 あるとき別大陸からやってきた人間たちに呪術を用いた『絶対服従の首輪』を嵌められ、100年以上にわたり奴隷として扱われ続けます。 自死することすらできず、まるで家畜のように繁殖させられ、尊厳を傷つけられてきた彼ら彼女らに明日への希望はありません。 しかし魔物とともにあった少女が『人間を殺すことで強くなれる』特異な力を得たことで、細く険しい道が拓けます。 この大地から人間を消し去ると決意した少女は、少しずつ仲間を増やしながらその力を分け与え、ともに旅を続けます。 故郷を、自由を、誇りを取り戻すために、幾度も困難を打ち破っていく清廊族。 憎しみから戦場へ身を投じた少女ですが、その終着点は復讐を果たすことではありません。 愛しいとはなにか。 求めたものはなんだったのか。 これは知るための物語です。 ◆ いきなり百合キスシーンから始まります。 人によっては驚き怯むかもしれませんが、これは大切なシーンなので引いて帰らないでください。お願いします。 メインの登場人物は女性ばかりで、男性は敵にしかいません。 これは清廊族が人間、特に男性からひどい仕打ちを受けてきた背景があるため、同族であっても男性に忌避感を持っているという納得の理由があります。 なので仲間になるのは女性だけです。 女性しかいないとなれば、そこで成り立つ関係に百合の香りがただようのは致し方ないことです。 群像劇ならではの視点から、実にさまざまな百合が描かれます。百合は良いものです。 とある少女は地獄に等しい場所から救ってくれた人にとても依存し、自分のものにしたいと暗躍します。 いびつで熾烈な愛情は、この物語のトリックスターとして際立っています。 さらに、人間に捕まって隷属させられた少女たちや、生まれたときから虐げられてきた少女たちの歪みが、いろんな仄暗い百合につながっていきます。 もちろん敵サイドにも百合があります。 百合だけではない、多種多様な愛情も随所に見られます。 ◆ しかしそればかりが注目点ではありません。 この物語は群像劇で、ダークファンタジーで、戦記なのです。 戦闘シーンは白熱し、手に汗握る展開が数多くありました。 少数の弱者がいかにして強者を打ち破るのか。 知恵を絞り連携を取り、ときには天候さえも味方につけ、そして成し遂げるジャイアントキリングは爽快感があります。 群像劇であるため、清廊族も人間もどんなことを考えて行動しているかがよく分かります。 敵である人間は、別大陸のいろいろな国家の思惑で新大陸を開拓し自分たちの領土にしようと画策しています。 同じ種族だからといって一枚岩ではないことがよく伺えますし、誰もが『主人公』になれるだけの人物だということが丁寧に描かれています。 いろんな立場の人の考えや背景を知ることで、私はよりこの世界観に没入できました。 そしてダークファンタジーゆえの重苦しさ。 人によっては強いストレスを感じる展開が序盤から続きますし、つらく苦しいことは最初から最後まで何かしらあります。 しかし清廊族の少女たちは、どんなときも決して生きることを諦めません。 選んできた選択肢が最善のものばかりではなくても、後悔することがあったとしても。 清廊族が人間に虐げられることなく、誰もが自由に幸せに生きられる大地を取り戻すために。 そして一人ひとりが求め、願った未来を手にするその日まで。 少女たちは立ち止まることなく戦い続けます。 ━━━━━━━━━━ ▼最後に 個人的に好きなシーン。 「ゲル状生物」は、はじめて二人で見上げた夜空。 「戦禍の大地」は、第一幕ラストの見下ろす大地。 どちらも印象的で、情景を思い浮かべられて好きです。 思い返してみると一番印象に残っているものが対照的で驚きました。 余談ですが、私の推しは敵として登場する二人です。 マルセナとイリアの、歪んでいてどこか切ない関係性から目が離せず、最初から最後まで私の心を掴んで離しませんでした。 百合はよいものです。 ━━━━━━━━━━ ※2021/07/14 投稿 ※2021/07/18 更新(微修正)
- 作品更新日:2022/1/3
- 投稿日:2021/7/14
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
ダンジョンが発生した現代を舞台にしたダークファンタジー作品です。 全体的に明暗のメリハリが程よい雰囲気で、主人公が手に入れた『力』に慢心することなく、地に足をつけて少しずつ強く成長していきます。 ふとしたときに挟み込まれる小ネタは分かると面白いですし、日常シーンと戦闘シーンの切り替えがいい塩梅だと思います。 生死ギリギリの戦いをすることもあり、緩急のついたストーリー展開だと感じました。 また『ステータスがいくら向上しようとも、経験が伴わなければ強いとは言えない』と、そんなことを思う展開の戦いもありました。 これは強くなって少しは楽な人生になるかと思ったのに、よりハードな道を歩むことになった少女の成長物語です。 ◆ 現在200話(約49万字)を超えており、主人公を取り巻く環境に急速な変化が起こり始めました。 これからどうなっていくのかとても楽しみにしている作品です。 恋愛展開をする予定はないらしいので『女主人公』が苦手な方にもオススメしたいです。 ━━━━━━━━━━ ▼世界観 ダンジョンの設定や主人公の能力も含めて、物語のバランスが上手く調整されています。 序盤は軽やかに物語が進み、タグにある『ダーク』なところはあまり感じません。 しかし話が進むうちに暗く不穏なものが徐々に顔をのぞかせます。 なぜ、どうして、どうするのか。 読者としては少しずつ違和感を覚えるように、いろいろな疑問や気になることが増えていきました。 ━━━━━━━━━━ ▼戦闘面 探索者の上位レベルは現段階で『数十万』という驚きの数字が確認されています。 そのため、主人公に多少の反則じみた能力(驚きの経験値アップ倍率)があったとしても、上にはより強い存在がいるのでそう簡単に最強にはならず、無双もしないと分かります。 また彼女が手に入れた『力』には、はっきりとしたメリット・デメリットが描写されています。 強大な『力』は、それに伴う『器』がなければ『諸刃の剣』でしかありません。 下手をすれば自らの力で致命傷を負うことも予想できます。 彼女は身をもってそれを理解し、手に入れた力のさじ加減を覚えながら鍛錬して探索者稼業をこなしていきます。 もちろん時として危険なことに足を突っ込んでしまうこともありますが、彼女の性格を知っていくとそれは納得できる場面だと感じました。 ━━━━━━━━━━ ▼登場人物 基本的に主人公のフォリアの視点で進められるこの物語。 彼女はおバカかわいい少女で見ていて飽きません。 ちょっとした数字には強いものの、少し国語力が弱い。 たまに妙な覚え間違いをした『言葉』を口にすることがあり、食欲に従順なところと合わせてチャーミングです。 私はフォリアの学力に関して「私、勉強苦手なんだよね。と言いながらテストで高得点をとる子」みたいな感覚で見ています。 また対人関係にややトラウマを持ちながらも、少しずつ他者と良い関係を築いていく様子は微笑ましいです。 フォリアの性格面は良いところも悪いところも程よく描写されており、親しみやすい人間味がありました。 ◆ 主要な登場人物たちは、多少のクセはあるものの優しく魅力のある人々ばかりです。 当たり前にフォリアを心配することはあっても、無闇にチヤホヤすることはありません。 一人の少女として、一端の冒険者として、比較せず扱ってくれるのが好印象でした。 悪人があまり出てこないことも、個人的には気になりませんでした。 これはもしかするとこういう理由かな、と考えてしまう描写があったからです。 すでに個人的な悪人認定をしているヤツもいるので、この先どんなふうに関わってくるのかワクワクしています。 ━━━━━━━━━━ ▼気になるところ 個人的には登場人物の名前が覚えづらかったです。 フォリア視点で人物像を描写されますが、彼女は『他人に関心が薄い』ので、本名がなかなか出てきません。 長らくあだ名で語られるため、初期から出ている人物でも「名前は何だったかな……」と、少し悩むことがありました。 ただ名前付きの登場人物はそれほど多くないので、一気読みするときには気にならないかもしれません。 また一人称で語られますが、フォリアの語彙力でその難しい表現を使うのか、と少し違和感を覚えることもあります。 しかし彼女は日々成長しているので、深刻な状況で用いられる難しい表現でもこれはこれでアリかなと思っています。
- 作品更新日:2023/5/1
- 投稿日:2021/7/15
ある事故物件を借りた話
人によって求めるものはさまざまでしょう。 たとえば、 家賃は妥当であるか。 部屋の広さ、設備はどうだろう。 立地や治安の良さも調べないと。 通勤通学にかかる時間も大切だ。 そんなことを考えた先に見つけるのは、 豪華なタワーマンションかもしれない。 おしゃれなデザイナーズ物件かもしれない。 昔ながらの木造アパートかもしれない。 ……そして『いわくつき』なのかもしれない。 事故物件を借りようとしている男。 いやに詳しく教えてくれる良心的な不動産屋。 入居を決めた男の真意とは? それを理解したとき、あなたは迷わず読み返すことでしょう。 わずか2000字に満たないホラーに、ゾッとしてください。
- 作品更新日:2021/3/14
- 投稿日:2021/7/17
綴音学園 花の教え
伝統ある女学園の頂点に座する少女を取り巻く、5人の少女たち。 思春期特有の万能感は自らを物語の主人公だと思わせる。 閉じられた世界のごく限られた期間、少女が少女でいられる時間をどう生きるのか。 その顛末はあまく、かぐわしく、知らぬ間に広がっていく毒のようでもありました。 ◆ 全寮制の女子高を舞台にした、ほんのり百合の香りがただよう現代ドラマ作品です。 全6話(約6万字)で毎話、違う語り手の視点で話が進められます。 いいところで物語が締めくくられており、その結末に納得すると同時に「この先が気になる……!」としばらく唸りました。 そして「なるほど『悪役令嬢』とはこういうことを言うんだな」と感嘆しました。 タイトルに「花の教え」と添えられているように、話の中にはいくつもの花が登場します。 それらは語り手にうまく絡められており、主な舞台となるサロンだけでなくそれぞれの心情にも合っていて、この閉じられた世界観を彩っていました。 そして『花言葉』もまた意味深です。 ◆ あらすじ欄が『プロローグ』のように書かれているため、まずそこから読んでほしいです。 舞台となる学園の背景が語られ、物語の中心となる『エトワール』と呼ばれる二人一組の少女たちがどういった存在なのか分かります。 そして『物語』は彼女たちが所属する文芸部の部員勧誘に行動をうつすところから始まります。 私が『これぞ悪役令嬢と言える一作だ』と評したこちらの作品。 読んだ方には理解していただけると思います。 ━━━━━━━━━━ 語り手は自身の背景を語る中で、いろんな考え方や他者への接し方を読者に示します。 一人称で語られるからこそ『本人』が見て感じたことと『他人』が知って感じることに差が生じることが面白い。 視点が変わると、同じことでも違う意味になってくる。 この物語の場合は『秘密』というワード自体、表裏一体のコインのように扱われるのが印象的でした。 そして語り手の少女たちは必ず、それぞれ違った角度から『エトワール』の二人を見ています。 ときには苦手意識を、ときには羨望の眼差しを。 一話一話いろんな少女の目線を通して魅せてくれます。 この物語においては『読者』ですら一種の舞台装置なのでは、と感じました。 ◆ ある話で「少女時代に同性しかいない空間で、同性に惹かれるのは一種の『ハシカ』のようだ」と描写されていたのが、個人的には好きでした。 自由が少ないところに生きている閉塞感や、その中で自分の性的嗜好に気づいたり勘違いしたり、本気になった人には振り向いてもらえない寂しさなんかも伝わってきました。 最初の語り手と、起承転結の『転』の部分が、個人的にはとても好きです
- 作品更新日:2021/6/5
- 投稿日:2021/7/17
犬と老女と映画館
人類は衰退の一途を辿り、荒涼とした世界に変貌した地球。 機械仕掛けの『犬』は、いまにも死んでしまいそうな『老婆』の願いを叶えるため、共に短い旅路を往きます。 どうして犬なのか。 どうして老婆に出逢ったのか。 どうして共に行動したのか。 どうして映画館なのか。 どうしてーー 一つずつ『どうして』という種が蒔かれ、丁寧に水を与えられて、それらが芽吹いた瞬間に気づいた事実に息が止まりました。 そして同時に、涙も溢れました。 犬がなにかに導かれるようにして向かった場所の意味。 老婆がずっと大切に持っていた物の意味。 ラストシーンは、魂が震える一つの絵画を見たかのように錯覚しました。 すべてが分かった上でもう一度読めば、最初に感じた景色と違ったものが見えるかもしれません。 すべてが儚くも美しい、心に残るSF短編です。 ◆ オノログ内で他の方々のレビューを拝見し、出逢えた素敵な作品です。 わずか5500字ほどの短編ながら起承転結が上手く、するりとその世界観に惹き込まれます。 台詞が少なくとも伝わってくるものがあり、むしろ台詞が少ないからこそ良いのだと思いました。 この物語の『核』となる部分を理解した瞬間から、私は涙が止まりませんでした。 もともと涙もろいこともありますが、この犬と老婆の旅路を鮮明に思い浮かべることができたからこそ、涙が溢れ出たのです。 とても強く、心に残る素敵な一作でした。
- 作品更新日:2020/10/11
- 投稿日:2021/7/24
闇に染まった死神は、怠惰で強欲な聖女に忠誠を誓う
魔法が一切使えないと蔑まれていたものたちが『稀有な能力』を目覚めさせて、主人のために邪魔なものをすべて蹴散らす無双っぷりが爽快な作品です。 百合(ガールズラブ)要素を含む、異世界ダークファンタジーです。 全206話(約63万字)で『第一部・完結』となっています。 ◆ 日常と非日常のコントラストや、お互いの信頼をもとに成り立つ『主従関係』が魅力的です。 主要人物が出揃うまでは、現在の視点から過去を振り返っていく構成になっています。 主人である聖女はどんな人柄なのか。 五人の従者はどんな経緯で集まったのか。 一人ひとり丁寧に描かれているため、愛着がわきます。 一騎当千の力を持つ六人ですが、いつかは困難や強敵に立ち向かわなければなりません。 これぞダークファンタジーの醍醐味だと言える展開もあり、見どころがたくさんあります。 ただし察しのよい人は『目次』だけで、先の展開を予想できる可能性があります。 できれば終盤、特に第7章以降は先のサブタイトルを見ず、一気に読んでいただきたいです。 ◆ 主従関係や従者同士のやりとりが可愛らしくて楽しいので、気心の知れた仲間のやりとりがお好きな方にオススメです。 主人公たち従者はみんな善人ではないので、非人道的なことも平気で行います。目的を果たすためなら手段は選びません。 聖女に盲信的なだけの従者はおらず……いえ、一人だけちょっと聖女が大好きすぎて暴走ぎみな人もいますが、主従の信頼関係はしっかりと築かれています。 ◆ 個人的に『第2章』の主役である、二人目の従者がとても好きです。 聖女と主人公とのやりとりに癒やされます。 この子を好きになったなら、ぜひ最後までご覧ください。 いろんな場面で能力を発揮して活躍しますし、仕事のあとで聖女に褒められる様子が可愛らしいです。
- 作品更新日:2024/4/24
- 投稿日:2021/10/8
【旧版】勇者を倒すのは魔王じゃなくて。
軽快でポップなギャグテイストの、ほのぼのファンタジー作品。 コミカルなのにほろりとくる展開もあります。 全10話(約1.5万字)の短いお話の中で、勇者たちの面白さ・頼もしさが十二分に見られます。 個性的で仲間思いな彼らの旅路を、もっともっと見たいと思った作品でした。 ◆ 優しい勇者。 脳筋な魔法使い。 たたかえない武闘家。 薬草でサポートする僧侶。 そして小さくもふっとした魔物、フロイ。 彼らは魔王を倒すための旅路にいました。 物語は『ゆうちゃ』の寝首をかこうとするフロイの視点で進みます。 フロイは心の中ではとても饒舌なのに、いざ声を出すと『舌足らず』な話し方になってしまいます。 そのギャップがたまらなく可愛らしいのです。 ボケの揃った勇者たちに対するフロイの心の中のツッコミや、コミュニケーションが取れているようで取れていないアンバランスさが面白くて好きです。 読んでいる最中、私はずっと「フロイが可愛い……フロイが可愛い……」としか言えない物体になりました。 ◆ 『だれかのために勇気をだせる者は、みんな勇者なんだよ』 勇者が祖父から言われたこの言葉を、彼はそのままフロイにも伝えます。 そのシーンがとても印象的で、弱い魔物のフロイは決して弱虫ではないのだと涙腺が緩みました。 はたして勇者は魔王を倒すことができるのでしょうか。
- 作品更新日:2021/6/4
- 投稿日:2021/7/16
テープ起こし
テープ起こしとは『録音』されたものを聴きながら、その一言一句を『文字に書き起こす』お仕事です。 しっかりと音を拾って書かなければいけませんから、イヤホンは必要不可欠です。 彼女がどうしてその『音声』を書き起こすことになったのか、その経緯や仕事ぶりは人間味がありました。 なにせ語り手はどこにでもいるようなただの女性。 家計の足しに、と苦手な仕事をまっとうしているだけの、健気な母親なのです。 テープ起こしは案外と難しいお仕事です。 慎重に、丁寧に、間違いなく書かなければなりません。 苦手な仕事に集中すればするほど、より鮮明に聴こえてくるものもあるでしょう。 このおよそ4000字のホラー短編を読めば、自分のイヤホンがちょっとだけ怖くなるかもしれません。
- 作品更新日:2021/5/27
- 投稿日:2021/7/20
「マグロを殺す。青森で」
死に方ダツ的なやつかと思ってたら違った。 いやいやいや、え? なんだか雲行きが怪しくなる速度がハンパない。 艦隊出てきた。 ちょっと待ってマグロ肉の入手にかかる人手がすんごい。 異名があんまりすぎて最後の一人でもうだめ。笑った。 そのへんにあるもん全部ぶち込んでかき混ぜましたみたいなノリ最高か。 隕石卑怯すぎる。3人いなくなったぞおい! お前なにしにきた!! オタクくんとアナウンスなんなの。 unkoDiscoveryだめしぬ。 満25歳なのに年齢不詳の一団ってどういうことなの。 だからお前らなにしにきた!! なんとなくしんだぞ孫三郎!? 属性だのなんだの出てきたときから嫌な予感してたけどそういうことする!? オチがあまりにも切な……くはないなあ!! 俄然ほかのマグロ作品にも興味が湧いたじゃないかどうしてくれる。 ━━━━━━━━━━ この作品をレビューするのにふさわしい言葉は、私にはひねり出せそうにありません。 なので普段以上に荒い『読書メモ』をそのまま載せる、という暴挙に出ることにしました。 頭の中ではこんな感じでツッコミまくりでした。うるさいですね。 ◆ こちらオノログ内でたまたま見かけたレビューで興味を持ちました。 いったいどんな話なのかと読んでみたら、あまりの超展開に理解が追いつくやら追いつかないやら、ずっと笑っていました。 抱腹絶倒です。 なんというか『闇鍋』みたいな作品でした。 しかも『とびきり美味しくできた闇鍋』です。 ……いやまってください、闇鍋とは書きましたが、それでこの作品の面白さが伝わるとは到底思えません。 これはもうご自身の目で確かめていただくしかありません。 なに、たった6000字ほどの短編です。 さらっと読んで、これからも『マグロ』を美味しくいただきましょう。
- 作品更新日:2020/10/18
- 投稿日:2021/7/24