誰がために花は咲く
最終更新:2020/10/4
作品紹介
舞台は疫病が数百年と蔓延する世界。 疫病を背負った少女エスターは、本能のまま、薬草の捜索に野を駆ける。 隣国から亡命してきた少年カロは、自らの出生の謎を求めながら、薬草の秘密を暴く。 病の者たちの国を作ろうと画策する男グルーは、修羅の道を歩みつつも、薬草の行方を追う。 それぞれ時も場所も違う三人の冒険譚で構成される、疫病の特効薬である薬草の花を巡るストーリー。 いったい、この世界に救いの花は咲くのか。 そして何のために、誰のために。 これは、不条理と矛盾に満ちた人の生と死、そして希望の物語。
評価・レビュー
読み終わった後にタイトルを二度見する
疫病が蔓延するなか、薬草をめぐる物語なのですが、 謎が多く、今後が気になる作品。 主人公のエスターが強くてかわいらしい。
lachs ヤケザケ
遠く小さい光に向かって、闇中を歩き続けた人々の物語
美しい物事を実現するため、醜いことに手を染めながらも這いつくばって前進していく、人間のリアルな姿を描いた物語。淡々とした俯瞰的な文が、逆に物語の彩度と没入感を高めていると思います。 治療薬が無く、発症した人体に触れれば感染する疫病がはびこり、罹患者は人と見なされない世界。そんな中、薬の元となる花が発見され、人や国家の行方が変わり始めます。花を見つけて薬が作られるまでの第一章、見え始めた希望が暗雲に閉ざされる第二章、か細いながらも確かな光が射す第三章。長い時間をかけ、生きるため生かすために走り、転んでも這って進んでいく人間の美醜が、丁寧に描き出されます。 すぐそばに人々の息遣いや足音を感じながら、誰かのために花が開く最後まで、ぜひ読んでみてください。
葉霜雁景