祖父の暗室
最終更新:2017/11/28
作品紹介
写真好きだった祖父が亡くなった。 思い出の暗室はワクワクする秘密基地か。それとも異空間。 高校生のマコトの目から見た、静かな喪の作業。 (2009年の作品を少し修正しました。修正前ver.は個人サイトで公開中)
評価・レビュー
5.0
wakagi
ああ、人間だなぁ……と思う。
食指の動くままにあれもこれもと読み漁っていると、「とても良い作品で、ないしょにしておきたいけれど、人にもおすすめしたい。なのにどこが良いのか、どう良いのかの言語化が難しくて、『良い作品だからとにかく読んでみて』としか言えない」という、扱いの難しい隠し玉的作品に時たま当たるのですが。この作品はそういったものの一つ。 祖父の道楽の暗室、通夜や葬儀のもようや回想を通して、主人公が知らなかった亡くなった祖父と家族の機微が、静かに、少しずつあらわになってゆきます。 そうしてそこに見えてきた景色を、私はとても、「ああ、人間だなぁ……」と感じ、深く惹かれました。 じんわりとしみいるような物語を噛みしめました。 丁寧に紡がれたこの物語は、わかる方にだけ、読んで欲しい。そんな風に思わせられる短編です。
5.0
wakagi