唐棣(はねず)家の庭に植えられた一本の藤が「鬼憑き」と呼ばれているわけは、枯れることなく年中花を咲かせることと、藤の下に緋色の目をした鬼がいると噂されているからだ。 けれども一人娘の薄紅(うすべに)が藤に癒やされ病を克服した為、当主の蘇芳(すおう)も藤を無下に扱うことは出来ないでいた。 薄紅の前にだけ現れる鬼。藤の香に誘われてよみがえる、薄紅の知らない記憶の断片。薄紅に持ち上がった縁談話と、鬼に対する確かな恋慕。 やがて記憶は藤の香に引き戻され、薄紅は鬼が誰なのかを知る。 1ページ1300~1500文字で綴った短編です。 Twitter企画・第3回いっくん大賞にて「シナリオ構築部門」と「佳作」に選んで頂きました。 © 2020 月音
更新:2020/7/15
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