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作:遥風 悠

あいつが勇者で、俺の職業(ジョブ)が道具屋だと?

 かつて、主人公である救世主が勇者と決まっていた時代。口には出さずとも誰もが勇者に憧れ、自分が魔王を倒す姿を思い描いていた。教会で職業(ジョブ)の宣告を待つ如月 淳(きさらぎ じゅん)もその一人。誰しも皆勇者、という訳にはいかないが、勇者でなくとも戦士や武道家、魔法使いとして冒険の旅に出る。そんな野望はあっさり崩れ、如月に与えられたジョブは道具屋だった。冒険をするでもモンスターを倒すでもない。モノを仕入れ、売り、カネを稼ぐことが彼の仕事だった。はじめは前任者や前日の惰性で行われていた発注は、徐々に需要を予測した仮説に基づくそれへと切り替わっていく。商品の動きが読み通りの筋書きを描いた際には、世界が自分の掌で動いているかのような快感を得ていた。  やがて勇者と同じようにレベルアップを繰り返し防具屋、武器屋、万事屋とジョブチェンジを果たしていく如月。従業員という仲間と共に、より高価なアイテムを扱うようになっていった。その最たるものがプライベート・ブランド。万事屋における最強のアビリティ。意図した効果・効能を持つアイテムを自らの手で創造する。能力者次第では、世界を破滅に導く力。転じて魔王を倒し、世界を救う力となる。かくして思い描いた姿とは異なるが、勇者一行に加わり魔王討伐を目指す如月。世界に平和をもたらし、モンスターを駆逐する。そうすれば、武器も防具もいらない世界がやってくる。

更新:2020/12/22

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