新解釈・白雪姫 ~白雪の異常な執着 または王妃はいかにして自分磨きをやめて罪に手を染めることになったか~
貧しい祖国のために『美しく従順な王妃』として生きる重圧は、一人の少女を変えてしまいました。 これは王妃の『苦悩に満ちた半生』を追う物語です。 全19話(約5.5万字)の中で、王妃と白雪の日々が丁寧に描かれた『義理の親子百合』作品です。 作品名もさることながら「あらすじ」から「あとがき」まで含めて、一つの世界観が作られています。 ◆ 義理の母娘となった二人は、姉妹のように仲良く過ごしていました。 一緒に食事をして、ドレスを選び、髪を梳かす。 けれど年月を経るごとに『自分よりも美しくなる白雪』に対する恐怖心が芽生えます。 なぜあんなにも可愛らしいと思っていた白雪を、その手で殺そうとしたのか。 祖国への愛ゆえに心を殺す王妃。 幼い頃から恋憧れる白雪の、静かに歪みゆく愛。 お互いに持つ『愛情の種類』が異なり、思い出の一つひとつが美しいからこそ、現実は惨たらしい。 ともに過ごした、かけがえのない時間。 幼少期から美しい王妃を見て育った白雪の愛情は、大人になるにつれてどんどんと膨らんでいきます。 そして七人の小人たちの言葉は『人間の価値観』ではないからグッとくるものがあり、白雪の歪みが際立ちました。 ◆ 本文はやや読点が多めですが、私は『絵本の読み聞かせ』をしてもらっているような独特のテンポだと思ったので、すぐにノッて読み切ってしまいました。 それに童話「白雪姫」を『義理の親子百合』として見ると、こんなにも自分の嗜好に刺さるものになるとは思いませんでした。 葛藤する王妃と、まっすぐな愛を向ける白雪の関係性がとても好きな作品です。 個人的な好みにバッチリどストライクで、読後はしばらくこの世界観に浸っていました。 百合はよいものです……。
- 作品更新日:2020/11/15
- 投稿日:2021/8/18
頭の中の音声読み上げ機能~文章の読み方は千差万別? ぜひ聞きたい、貴方はどんな読み方をしていますか??~
人によって『文字』の見え方はさまざまです。 ーー文字は『情報』だから、それを見て『何か』を感じることはない? いいえ、一部の人にとって文字は『音』に変わります。 筆者は『頭の中で文字を読み上げる機能』を持っておられます。 しかも、文字の種類によって『音声』が変わるのです。 小説なら作風によって女性的であったり、男性的であったり。 キャラクターの声なんて、自身の中でピッタリなものがあるため、アニメ化した際には困ることもあるのだとか。 この機能が『普通のこと』だと思っておられた筆者は、お知り合いにこれは『特殊なこと』なのだと気付かされます。 ーーでは、どれほどの人が『読み上げ機能』を持っているのか? それが気になったため、こうしてエッセイにまとめられました。 感想欄はまさに千差万別なご意見ばかりで面白かったです。 本文と合わせて読まれることをオススメします。 ◆ 1600字ほどのエッセイで、とても興味深い内容でした。 私自身、基本的に『文字はすべて』頭の中で読み上げています。 それは朗読劇のようであったり、アニメ映画のようであったり、その時々で変わります。 こちらの感想欄では、筆者や私と同じような『読み上げ機能』を持つ方もいれば、また違った『読み上げ機能』を持つ方々の『頭の中』が言語化されていました。 読後にご自身の『頭の中』がどうなっているか、一度考えてみるのも面白いと思います。
- 作品更新日:2021/8/13
- 投稿日:2021/8/20
俺が投稿している無料小説投稿サイトへのコメントがおかしい
自作品に『通知』がきたのに、確認したときにはもうコメントが消えている。 そんなことが何度も続くうち、主人公はタイミングよく『コメント』を見ることができました。 けれど内容がおかしくて、これを書き込む人間の『正体』はなんだと考え、想像が二転三転していきます。 不気味な読者がもたらすものは何だったのか。 一読者の目線から見ても、このオチには背筋がゾワゾワとしました。 実際に作品を書かれている方々にとっても、こんな書き込みをする存在は、とても恐ろしいのではないでしょうか。 ◆ 誰しもうっかり『誤操作』をしてしまうことはあります。 私自身、なろうでは意図しない数の★を押していたり、カクヨムではフォローしたはずなのに勢い余って逆に外してしまっていたり……。 しかし評価やブックマークならいざ知らず『コメント』に誤操作はありえません。 明らかに何らかの意図があって行っていることです。 その理由が分かったとき、一瞬ポカンとしました。 自分の好きな作品にこんなことをする存在が現れたらと思うと、より恐ろしかったです。 リアルに居そうな読者の行動が怖い、約3000字のホラー短編です。 ※2021/08/23 一部修正
- 作品更新日:2021/7/23
- 投稿日:2021/8/22
四字熟語 百合小説
学生、義理の姉妹、社会人。 三組の百合が、たったこれだけの文字数に凝縮されています。 しかもただ四字熟語が並べられているわけではありません。 互いを想い合う二人の女性がしっかりと見えくる、そんな四字熟語が並べられているのです。 それぞれの関係性は百合のセオリー通り。 なのに言葉のチョイスが上手くて不意をつかれる。 四字熟語のポテンシャルを見せつけられました。 そして私は読み終えてすぐ、作品に倣って四字熟語を書いてみました。 五百文字 秀逸一作 相思相愛 百合最高 挟男絶許 拍手喝采 屋烏之愛 覗見尊死 もっといろんな百合をこのスタイルで読んでみたい! と思った秀逸な一作です。 ◆ 余談になりますが私は最初、四字熟語だからと『文字』を意識して読んでいました。 しかしだんだんと『ルビ』が振ってあるように見えてきて、なんとも奇妙な『ゾーン』に入っているような感覚を覚えました。 ネタに見えますが、真面目に「読める、読めるぞ!」となったのです。 この四字熟語だけの作品。 不思議な引力のあるお話でした。
- 作品更新日:2019/3/4
- 投稿日:2021/7/21
そして、君たちは世界の片隅で引きこもることを選んだ。
この海の底は、少女との約束の地でもありました。 エネルギーの枯渇問題は、この地球に生きるものすべてが無関係ではいられません。 日本は『独自の技術』によって海洋や宇宙に大規模なエネルギー供給機構を創り上げ、鎖国することを選択します。 女性は国民の義務である徴労のため、数ある職場から海底施設を選びました。 そこへの道中、高校時代のクラスメイトと再会したことで『幼なじみの少女』のことを思い出します。 「二十歳になったら、あの場所で再会しよう」 かつての約束を胸に生きる姿は背景描写と相まって、女性のまとう空気感を切なくも美しいと感じさせます。 どこか空虚感もある「海底庭園」は元クラスメイトの視点から見ると、また違う景色を映し出します。 そして「天上の庭」では国家機密の『核』が判明し、この世界がディストピアなのだと印象づけられました。 とても好きな群像劇作品です。 ━━━━━━━━━━ こちらは元々、3つの短編からなるシリーズ作品として掲載されていたものが『加筆修正』された連載作品です。 群像劇となっているため、一人ひとり違った価値観から生きている様子が伺えます。 個人的に地の文が好きで、頭の中に幻想的なイメージを思い浮かべながら読んでいました。 鎖国された日本で『国民の義務』が課せられているような世界観、その核にある『国家機密』がなんなのか分かった瞬間はかなり驚きました。 3作目「天上の庭」を読むまでは『ディストピア』という感覚はなかったのに、秘密が分かってから読み返すと一気にディストピア国家・日本を感じられました。 ━━━━━━━━━━ 現在15話(約4.2万字)で、各5話ずつ区切られています。 百合要素(ガールズラブ)があるのは「海底庭園」の2作品ですが、それほどあからさまではないので苦手な方にもオススメしたいです。 ・海底庭園 ■竹下 幼なじみの少女との約束を胸に生きる女性のお話。 ・海底庭園 ■亀田 好きな女の子と再会し、高校時代の出来事を振り返って前に進むお話。 ・天上の庭 ■江崎 普通の技術要員だった男性が、国家機密に関わるお話。
- 作品更新日:2022/3/30
- 投稿日:2021/9/1
自分なりの『なろう』で読みたい作品を探す方法
自分と『趣味趣向の似た』作者や読者の『マイページ』を渡り歩いてみませんか? 「好みの作品を見つけられない」 「みんなはどうやって見つけているんだろう」 誰もが一度くらいは、こう考えると思います。 そんなときはぜひ『だれかのマイページ』を活用して、自分好みの作品を発掘しましょう。 ・公開ブックマーク ・公開お気に入りユーザ ・評価をつけた作品一覧 ・レビューした作品一覧 これらのページは、未だ見ぬ作品の宝庫です。 ーーそもそも『だれのマイページ』を見ればいいか、分からない? では、まず自分の『好きな作品』に対して『感想』を書き込んでいる方を見つけましょう。 好印象を持った感想を書いた人は、貴方と似た感性を持っている可能性がとても高いはずです。 「自分では手を出さないな」 「これは読まないだろう」 なんて思っても、好きな作者さんや好みの似た読者さんが『評価』していたら気になりませんか? 私はちょっと気になります。 「もうランキングは飽きた」 「自分で検索することにも疲れた」 そんなときは一度、だれかのマイページを探検してみてはいかがでしょうか。 ◆ このエッセイ(全5話/約1.5万字)では、マイページの『活用法』が面白く分析されて書かれています。 とはいえ、知っている人は知っている方法です。 ここでは主に『なろう初心者さん』に向けて、オススメしたいです。 (このレビューを初心者が見るのか、という野暮なことは言わずにお願いします) 私はたまにこの方法を利用して『好みの作品』を見つけていました。 読んだらもちろん★評価をして、それからコレクションを並べるように分類してブックマークします。 しかし作品の★評価をすることで『読書の記録』を残せる、という考え方には、目から鱗が落ちました。 評価した作品は誰でも見られるページにリストアップされます。 なるほど確かにここで『いつどんな作品を読んでいたか』が分かります。 懐かしの作品を振り返ることもできます。とても便利ですね。 つまり読者はただ『★評価』を押すだけで、もう立派な『発信者』になれているのです。 私はこのエッセイを読むことで、一読者であっても自分が『発信する側』としてできることある、ということを再認識できました。 これからも読んだ作品には★評価をし、ブックマークを行っていきたいと思っています。 ━━━━━━━━━━ ※2021/07/18 投稿 ※2021/07/19 改題・加筆修正
- 作品更新日:2020/11/28
- 投稿日:2021/7/18
26歳の女だけど、パパ活女子を囲ってみたら、死ぬほど癒された
バリキャリな主人公。フリーターの元カノ。パパ活をする女子大生。 三人の奇妙な『縁』が素敵で、彼女たちの話をもっと知りたいと思える百合作品です。 主人公は少し打たれ弱くて流されやすい印象ですが、行動力があり、外面と内面のギャップが魅力的でした。 ◆ 全31話、約9.5万字で完結しています。 今後『SS』も書く予定があるそうなので、三人のその後が見られると楽しみにしている作品です。 ※少しだけ『DV(家庭内暴力)』に関する話題があるので、苦手な方は終盤に注意が必要だと思います。 ◆ 仕事の疲れを癒やしてくれる『女子大生』は雰囲気が柔らかく、ふわふわとしていて、甘え上手なのに嫌味がありません。 主人公は彼女の『パパ』になることを即断即決します。 ある日突然、主人公の家に転がりこんできたのは、憎めない性格で自由に生きるフリーターの『元カノ』です。 お金も住む場所もない元カノを親友として見捨てられず、二人は共同生活を始めました。 仕事をして、週に一度パパ活女子に会って、家に帰れば元カノがいる……。 元カノとの生活リズムの違いや、女子大生がパパ活をする理由。 そして三人の『縁』がなにか分かっていく様子。 話の緩急が絶妙で、このあとはどうなっていくのかと、読む手が止まらず物語に引きつけられました。 友達以上恋人未満という空気感が、あいまいなのに魅力的な関係を作っています。 ━━━━━━━━━━ 全体的に明るめの雰囲気が好きで、特に主人公の『パパ活女子』に対するリアクションには共感することが多かったです。 なにせ女子大生が最初から最後まで可愛いんですよね……。 こんな可愛らしい子のパパになったら、私生活が潤うこと間違いなしだなと思いました。 女性同士のドロドロとした妬み嫉みや、駆け引きみたいなものが『ない』ところも、好印象です。 作品名そのままに、癒やされるシーンが多かったです。 ただ良いところで話が上手くまとまって完結したので、人によっては物足りないと感じてしまうかもしれません。
- 作品更新日:2021/12/26
- 投稿日:2021/9/20
黒は胃酸に溶けていく
感情に善し悪しはあるのでしょうか。 あるとするならば、それを決めるのは誰なのか。 他人のいろんな感情に影響を受けてしまう主人公にとって、悪い感情を食べてくれる少女は気の合う優しい友達です。 けれど、いろんな感情をパクパクと食べてしまう少女の『優しさ』は本当に善いものなのでしょうか。 他人が思う優しさと、自分の思う優しさの違い。 二人の間にある空気が変わった瞬間には、仄暗い百合の良さを感じました。 ◆ ホラー短編(約7600字)です。 ……が、個人的にはそれほどホラーと感じなかったので、苦手な方でも読めると思います。 百合的には、お互いを知って、お互いに優しい人だねと言って、放課後を楽しそうに過ごす様子が微笑ましい……。 二人が友達になるきっかけや、仲良くなる会話が可愛らしいです。
- 作品更新日:2021/8/28
- 投稿日:2021/9/22
お嬢様よりレビュー書きどもへ ― レビュー読み専によるワンポイント ―
「皆のもの! お嬢さーーおのれの好きな作品のため、熱きレビューを書くのだ!」 絶妙に面白おかしい語り口のお嬢様。 彼女が求めるものはなにか? それは『誰かが推している作品』のレビューです。 では、どんなものがお好みなのか? 3つの例を交えてその理由をお話してくれます。 たとえば『レビュー』を書くときに、ここはちょっと注意したほうがいいかも。 こういう『書き方』だと未見の読者さんには響かないかも。 ……といったことが分かり、よい刺激を受けました。 お嬢様の「わたくしが読みたくなるようなレビューを書いてくださらない?」なんて空耳が聞こえてくるようです。 語りの演出、フリとオチがよくてニヤリ……。 思わず筆を執った次第です。 興味を持った、そこのあなた。 少しお嬢様のお話を聴いていきませんか? ※あくまでも『お嬢様が好む』レビューについて語られている、ということをお忘れなく!
- 作品更新日:2020/2/22
- 投稿日:2021/7/18
読み専がカクヨムに登録してみた。
どのお話も興味深く、感心や共感に頷いたりしました。 思っていることが簡潔にまとめられていて読みやすかったです。 ーーしかし、ここではあくまでも『一人の読者』の考え方が書き連ねられています。 全20話(約1.7万字)を読み終えたあと、同作者の『ほかのエッセイ』も読みました。 その上で、この方はだいぶ過激で極端な類の読み専だと感じます。 自分とはまったく違う、苛烈だ、と感じる部分にはとても驚きました。 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いタイプだというこの作者さん。 こちらのエッセイはかなりマイルドです。 しかし少々の毒があり、人によっては多少打ちのめされるかもしれません。 多くの読者は作品の裏にいる作者のことを考えることはあるのか? 「第15話 素性など知ったことではない。」のラスト3行には、そこはかとない恐怖を覚えました。 けれど歯に布着せぬ見解だからこそ、作者・読者ともに読む価値はあると思います。 私には毒を含む言葉を書く勇気がありません。 そのため、率直に自分の見解を述べる姿勢は尊敬できると感じました。
- 作品更新日:2019/6/5
- 投稿日:2021/7/23