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カクヨムファンタジー連載:3話完結

楓の葉舞う頃

 この作者さんの他作品と絡む登場人物がいますが、単独で読んでも全く問題ありません。  強風のあとの落ち葉の片付けをしていた主人公寛。少し他者との距離を感じる人ですが、彼は他の人には見えない生き物……幽霊や妖怪? の類、そして妖精が見えるという秘密が。  そんな彼が出会った不思議な生き物との触れあいと、世話焼きな妖精との邂逅が寛に変化をもたらせます。  「少しだけ寂しい」  そんな夕暮れに読みたい、心に寄り添うハートウォーミングな優しい物語です。

5.0
  • 作品更新日:2021/10/20
  • 投稿日:2021/10/28
カクヨムファンタジー連載:75話完結

暗殺者の結婚

 元暗殺者の女性が、領主という身分の人間と結婚するという、通常あり得なさそうな設定。しかしそれは、奇をてらったものではなく…!  まず彼女が暗殺者としての過去をもっている事が自然。そういう社会情勢だったという納得の理由があり、彼女が結婚するまでの流れも全く違和感がなく。  暗殺者であることがバレてはいけないという緊張感、秘密を抱える後ろ暗さ、それが作りだす切ない空気。領主である結婚相手のユタカが、領民に愛される素晴らしい人であるだけに。  でもそんなユタカは、命を狙われている状況。  隠すべき暗殺者時代の知識、経験、技術を駆使し、主人公サザは彼を守っていく。もしサザにこの過去によって得た力がなければ、ユタカは命を落としていたのではという場面もあり、彼女の過去が現在の彼を救うこのバランスが絶妙で、暗殺者であることがバレてはいけないハラハラを感じつつ、領主の妻としての仕事をこなし、周囲に愛されていく彼女を応援せずにはいられません。  見目愛らしく、その体に毒を持つスズラン。暗殺者である彼女の過去は、まさにその秘められた毒といった感じでしょうか。でもその毒は、彼を守るそのためだけに使うと決意する彼女。愛らしくも凛々しいその姿はスズランのようと言って差し支えないと思いました。  実際にこの国が存在するように思える世界の作りこみに、気付けば没入しているという素晴らしい作品です。  展開にも緩急があり、飽きません。完結しているので一気読みもおすすめ!

5.0
  • 作品更新日:2022/1/17
  • 投稿日:2021/7/25
カクヨムミステリー連載:4話完結

例えば君が、見えていたなら

 筆者が書く「名木橋シリーズ」の短編のうちの一作品。シリーズ作品のひとつ”正史の悪魔”の主人公であった「僕」の、その後の出来事が綴られていますが、そちら未読でも楽しめます(読んでいるとなお楽しめる)。  授業風景から幕開けする物語に、探偵扱いされてしまう心理学者。  彼の中に巣くう悪魔がチラチラと顔を出しながらも、その心理学から得られるヒントと知見から、鮮やかにその問題に向き合います。  心理学をテーマにしているだけあって、「僕」を含め「依頼者の女の子」、そして「幽霊」さえも、その心理の流れと揺らぎが表現されており、読後に不思議な感覚を残します。  ミステリーを解決まで読み切ったという達成感と同時に、人の心の繊細さと闇、人間心理が引き起こす不思議な結果、それによって更にもたらされる新たな心理。ドミノ倒しのように連鎖する心の動きは必見です。

5.0
  • 作品更新日:2021/3/8
  • 投稿日:2021/7/26
カクヨムその他連載:42話

ライブラ

 色々な物語が詰まった短編集作品です。  文字数は少ない物語ですが、ページ数が少なそうだと思って手に取った本が、ズシリと見た目より重かった、みたいな感じです。作品から感じる色も、鉛の色を感じるかもしれません。ダークファンタジー路線と言いますか、全体的に硬質で冷たい。そしてこの予想外の重さという事で、この短編集はページが鉛で出来ている、と表現したいと思います。  何処か刹那的な哀しさがあり、寂しげな空気。そんな雰囲気の中に、血の通った人間の姿もあり、行間を思わず読まさせられるという部分もあって、短編でありながら、心に残る物語ばかり。  登場人物も印象に残ります。  タイトルのライブラ(天秤)は”短録.リブラリア”の中に出て来る図書館の名前でもあります。完結はなく、これからも物語は紡がれ、この図書館の蔵書は増えていくでしょう。  そう考えてしまうと、この”短録.リブラリア”のラストが怖いものに感じる等、読者が少し想像力を持つと、物語が一気に長編のふり幅を持つという。  ぜひお読みください。

5.0
  • 作品更新日:2022/10/3
  • 投稿日:2021/7/26
カクヨムファンタジー非公開

追憶の

 優しい文体、それが第一印象でした。児童文学のように柔和でわかりやすく、囁いて来るような筆致に導かれ読み進められるのですが。語り部がどんなに優しくても、吟遊詩人が美しい調べに乗せたとしても、世界は残酷であると気付かされます。  主人公は記憶を失った少女、アリス。  ひっそりと暮していた優しい治癒師カインツと出会い、色々な出来事の過程、新たな人との出会いで経験を積み重ねていきます。  悪魔とは?精霊とは?この世界は?  数々の謎とアリス自身の真実を見つける旅路の中で、彼女がこの世界で得る経験を追体験していく物語。  それぞれのエピソードで、物語を彩る登場人物たちの感情が緻密かつ丁寧に表現されていて、光が影を作るように、憎しみの影には哀しみが。やさしさの裏には後悔が。相反するものが、何度も繰り返し打ち寄せてきます。  人は相手を上っ面で判断しがちですが、一人の人間の中には常に表裏一体でプラスの感情とマイナスの感情があり。この人はこういう人だなどと、一言で表現できるほど世界も人間も単純ではないと知る事となり、とにかく人物描写が深いの一言です。  葛藤や苦しみの救いとなる一筋の光明は、優しさなのか正しさなのか強さなのか。本当の意味での救いとは?  残酷な出来事に心をえぐられますが、えぐられたこそ掘り出される新たな感情への気づき。  これは、己のこころの姿を知る物語でもあります。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/1
  • 投稿日:2021/7/21
カクヨムファンタジー連載:563話

迷宮保険

 ウィザードリィ風という事で、ゲームをやってないからと、読まないのは勿体ないです。私はウィザードリィは全く未履修ですが、楽しく読めております。手に汗握るような緊張感ある戦闘の他、敵から身を隠したり、迷路のようなダンジョンを彷徨ったり。ピンチの後のピンチ、その合間の、ほっとする会話のやり取り。  昔ながらの王道ファンタジー的な設定は、知っていた方がいいかなという気はしますが、アンデッドがどういうものか、エルフ等の種族がどういうものかという程度でいいかと。  最近のRPGはどれもおしゃれで綺麗な世界で、装備も装飾たっぷりのSSRがつくカードイラストみたいのを最初から纏っていますが、こちらの古き良き時代を彷彿とされる世界観は、まぁ、ちょっとみすぼらしくて薄汚い。暗さとか臭気とか、そういうのが、ままある感じで、飾り気がなく、それだけにリアル。湿ったダンジョンの苔の匂いとかもしてきそう。そのせいか一緒に冒険しているような気分すら味わえます。ただ凄惨なシーンもリアリティがあって、うぇっとなりそうだから、食事中に読むのはおすすめできないかも。もし食べられるなら、あなたもダンジョンに潜れる素養在り、という事で。  レベルやステータスが数字で出る点が、とてもゲームらしいですが、それがこの世界観では違和感がなく、あるのが自然にすら思えます。チート的なアイテムや、エバとアッシュロードの能力もありますが、それも物語を彩る要素の一つであって、ズルっぽくないです。  文体が読みやすいですし、TRPGのリプレイ感もあるので、そういう路線が好きな人は間違いなくハマるかと。  読み始めると止まらないので、まとまった時間を作ってぜひ。

5.0
  • 作品更新日:2024/2/23
  • 投稿日:2021/7/31
カクヨム青春・ヒューマンドラマ完結非公開

アップルパイ・フレンド

 主人公晶子の概略を知ると、人によって好き嫌いが別れてしまうのかなとは思うのですが、私は彼女の事がとても好きになりました。  晶子は愛とか恋という形の意識を他者にもてないタイプで、でも性欲はあるからとセフレを作っちゃう。こういう人とそりが合わない人もいるとは思うのですが、彼女はすごく小ざっぱりしていて、サバサバしているというのでしょうか。  友人にも恵まれているし、表裏がなく、人との関係解消の後も引きずらない。人の物に手を出す事もなければ(相手が隠していた事故はあっても)、あとくされもなく、とにかく自由。人を傷つけない自由さ。とにかく相手に対して執着心がない。軽いといえば軽いのだけど、悪い意味ではなく、割り切っていて軽やかと言った方がふさわしい感じの子です。  そんな彼女を見ていると、恋愛って何だろうと。会いたい、いつまでも傍にいたいと願う満たされない心を恋というと辞書にはあるけれども。そういう感情を持つ事は果たして必須なのだろうかという。    彼女自身もいつか自分も人を好きになったりするのかな、と思いながらもそんな相手はずっと現れずにいて。    諦めともまた違う着地点。現代ドラマというジャンルに相応しい作品です。

5.0
  • 作品更新日:2022/1/11
  • 投稿日:2021/10/7
カクヨムミステリー連載:20話完結

彬光の家族

 高木彬光の事を知らずに読みました。読む上で覚悟をしておいた方がいい箇所があるため、その注意を兼ねて少しネタバレ感のあるレビューになっておりますので、以下を読む方はご注意ください。  日本の三大なんたら、の中で一番、知られてない人のような気もするけど、作中でも”知らない”人がたくさん出て来るので、作中で知って行けばいい、という感じでしょうか。  最初に見えるのは「私」の周囲のひび割れた硝子。母がいない事で空いた心の穴。穴が開いたというか、本来は母が埋め尽くすはずだったエリアが、母がいない事で埋まらず、そのまま高校生になってしまったという感じですね。  「私」は「私」をも含めた周囲への「嫌い」という言葉で傷つき、傷つけて行く。五話で、彼女は荒ぶってしまい、周囲の硝子が粉々に砕け、その破片で読者である私も、作中の「私」も、とにかくなんだか傷ついてしまい。五話以降が読めなくなって、随分間を空けてしまいました。受けた傷が癒えたのか続きを読もう!とやっと思えるようになり、続きを拝読したのですが、硝子が砕けた事による風通しの良さが、六話からスタート。  ひび割れた硝子が砕け散った事によって、消え去る壁。  周囲の距離感が一気に縮まっていく。    これは心の物語ですね。一人の女子高生の心のピースが埋まるまで。言葉に表現しにくい、不可思議に動く心。理屈では言い表せない事柄が、心理学の知識で整理されていく。  自分の気持ちが表現できなくて、”嫌い”と叫び続けた「私」。  素敵な良い人がたくさん出てきます。  とにかく、五話までを乗り切って、最後まで読んで欲しい一作です。

5.0
  • 作品更新日:2021/2/26
  • 投稿日:2021/7/31
カクヨムファンタジー連載:45話

御伽世界のアイデンティティー

 望月友也。彼の平和な日常はある日の流れ星と共に終わってしまった。  不思議な本との出会いの後に訪れる、クラスのマドンナ的な彼女とのおしゃべり。楽し気なラブコメでも始まるのかと思いきや、突然現れる猫耳パーカーの謎の人物――。命の危険すら感じる冒険が、彼の望まぬ方向で突如始まってしまい。  彼を助けたのは織姫という少女。彼女と一緒に行った異世界には謎のかぼちゃ頭が…。  お伽噺をモチーフとした異能系バトル作品です。それぞれが持つ本の物語に沿った力を駆使して戦う事になるのですが、主人公の望月は最初はなんともへっぽこ。織姫とかぼちゃ頭のジャックは、そんな暗闇を歩く望月の足元を照らす灯。  メジャーなお話からマイナーな物語まで、世界各国の「お伽噺」をモチーフにしたエピソードと登場人物に彩られた、少し不思議な物語。見事なまでの比喩表現を駆使した情景描写は、映像が迫って来る迫力あり。  この作品はそんな世界の中で、織姫たちの手を借りながらも確かな歩調で成長する「彼」の元で生まれる新しいお伽噺。  あなたも堪能してみませんか?

5.0
  • 作品更新日:2023/8/10
  • 投稿日:2021/7/26
カクヨム恋愛連載:11話完結

倍希釈のコーヒー

 「コーヒーと恋愛は熱いときが最高である」これはドイツのことわざであったでしょうか。この物語のコーヒーは、熱いです。  ただし、薄い。  まずいコーヒーでも、全くコーヒーがないよりは良いと、どこかの映画監督も言ってたけども。  甘酸っぱい少年の青春の1ページに刻まれる、苦味たっぷりの出来事。準備室は彼の避難場所であったけど、場所そのものが少年を救っていたのではなく、実際に匿って癒していたのはそこの主である一人の教師。  コーヒーを小道具としてうまく扱っている物語で、何故コーヒーが薄かったのか、その理由に複雑な心情が絡んでいます。  大人と少年、男と男、教師と生徒という三重の壁がありながら、気さくで軽妙なやり取りで、なんとなく不思議な関係を培う二人。  濃い(普通の)コーヒーが出されるその時は、新たな関係に変わるとき。  幼馴染の少女を含め、三者三様の想いと考えが交錯し、ひとつの出来事に対し、それぞれの視点側でも描かれているので、全員の立場の気持ちがわかります。性別をあえて意識せずに、それぞれの立場とその行動の結果がどうなるか、という読み方をするのも良いかもです。  読後感が良く、軽快な筆致でさくさく読めるおすすめの一作。

5.0
  • 作品更新日:2021/6/6
  • 投稿日:2021/8/7