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エブリスタSF連載:6話完結

アルカへ

地球は汚染されつくし、人類は大きな賭けのような無謀な作戦を断行した。 雨が降り続き刻々と姿を変える大地、荒れた灰色の海。風にもまれる白い鳩。 海に飲み込まれてゆくあらゆるもの。壮大な情景描写から作品は始まる。 そこでカンサクとコウタ、ふたりのエゴが衝突する。 愛するコウタを救うために、カンサクはコウタの恋人クリスを拉致する。 恋人の命とコウタ自身の命の保全という餌をちらつかせて愛してくれとカンサクはコウタに迫る。命と死を秤にかければ命を選ぶだろう、というカンサクの計略は失敗する。 カンサクの計略はもちろん利己的だが、コウタの「人が死んでいくのをみて自分だけが生き延びることはできない」も実はヒロイズムによる行動である。コウタには何の戦略も生きる手立てもない。ただアルカという略奪した船に積まれた食料だけが頼みなのだ。 コウタが恋人とふたりで船出をしたあと、人や動物を救うことはできない。反対に人間を含む動植物の胚を持ち出して、新たに創造主としての仕事を始めることが暗示されている。 カンサクは旅立っていったふたりに最後の贈り物をする。 そしてカンサクの最後は書かれていない。 もしかしたらイルカになる道を選んだかもしれないが、そうではないように思う。 愛に殉じたカンサクがひとり甲板に立ち、鳩を見送る姿が心に迫る。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/22
  • 投稿日:2021/12/22
エブリスタヒューマンドラマ連載:4話完結

大嫌いだったクリスマス

「これ重いでしょうか。読んでみてください」とDMをいただいて読んだ。 重かった。でもこれはななもりさんによって書かれなければいけない作品だったので、さらに書き込むことをお勧めした。 ひと一人の人生はかくも重い。 生きていれば時間はすぎてゆく。しかし清くんは七年前に時をとめたまま星になった。蝶子ママは温かく優しい人なのに病魔に取りつかれた。 このひとたち、そして子供たちの人生を克明に書くことは作者さまに与えられた使命なのだ。 イルミネーションのまばゆい光は亜子を照らす祝祭であると同時に死者を悼む天国への誘導灯だ。そのように感じた。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/16
  • 投稿日:2021/12/16
エブリスタ恋愛短編完結

空の飛び方

人は誰しも別れを経験する。避けられない別れかもしれないし、避けることができた別れかもしれない。 別れの直後には楽しかった思い出や、したかった希望がしばらくは頭の中で渦を巻く。それが恋しい人であればなおさらだ。 僕は幼馴染の遥とずっとつかず離れずの関係を保っている。もちろん関係を変えたいと思っているのだがなかなか行動に移すことができない。今の関係を失いたくはないが先にすすみたい、と僕は葛藤する。切り詰めた短い文を繋げていくことで、僕のめまぐるしく変わる思いがカットバックをみるように伝わってくる。さすがの表現力だ。 そんな甘やかで切ない日々はある日突然切断される。 僕は部屋に閉じこもってしまう。 考えてみてほしい。15年ほども幼馴染をして親しく行き来していたのだ。僕の部屋には遥の思い出がたくさん残っているだろう。もらったプレゼント、そこここに見える遥の残像。僕の後悔と悲しみは癒えることがない。 12月21日「草野マサムネ誕生会」の日、うとうとしていた僕は、遥の声で目覚める。 いったい僕はどの世界にいるのか。 作者は何も書かない。心憎い配慮である。このラストで読者も僕も救われるのである。 ところで、作者さまの高い技術力を味わってほしいので、すごい蛇足感満載ではあるが、一応説明しておく。 僕の心中思惟が続く前半から中盤はレビュー中にも書いたように、非常に短い無駄のない文を積み重ねていくことで千々に乱れる葛藤が表現され、事故後友人からの電話を受けるあたりからは小説風に余韻余情ある文体が使われている。 そしてラストは明るいややライトな口語表現である。 二度、三度読み直してみてほしい。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/21
  • 投稿日:2021/12/22
エブリスタヒューマンドラマ短編完結

12月11日のメリークリスマス

本作はアダルトチルドレン、児童虐待という、とても重い内容を含んでいるが、そこにとぼけた夫とメガネを絡ませることでふんわりとした、優しい物語にすることに成功している。 虐待へ「あと少しだけ」まで追い詰められている鞠花。たしかにACではあるが、そうでなくても昼間ひとりで男の子を育てるのは大変で、誰もが陥る可能性のある状況だ。 それを止めるのは夫、そして夫からプレゼントされた不思議な眼鏡。 自分を虐待していた母(故人)とようやく和解を成立させて、家族は敵ではなく味方であることに気づく。 最後は三人でケーキを買いに行くところで終わるが「ケーキはいつ食べたっていい」には、作者さまの「過去にこだわらなくていい。あなたが決めていい」というエールが込められている。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/11
  • 投稿日:2021/12/22
エブリスタ歴史・時代連載:4話完結

あなたの背中

読み始めるとすぐに18世紀のドイツへ連れていかれたような気持ちになる。 待降節、石の冷たさや吐く息の白さ、静かに降臨を待つ街の静かな興奮。 その反対に台所では賑やかに女たちが料理をつくる。白い湯気が暖かい。 市場で大量の買い物をしている女性がいる。バッハの妻アンナである。 わたしは彼女から不安を打ち明けられ、一緒にご主人の様子を心配し、彼女と一緒に喜んだ。 読者をそんな気持ちにさせる作者さまは、アンナを自分の身内のようによく理解されているのでしょう。 バッハとアンナがまるで傍にいるようでした。 芳醇な作品をありがとうございました。

5.0
  • 作品更新日:2021/11/29
  • 投稿日:2021/12/16
エブリスタ恋愛短編完結

天使が舞い降りた日

滑らかな文章が心地よく、最後まですっと読めてしまうが、ひとつひとつのエピソードは大変に重たい。 妻と子供の死。引きこもり。自分の目の前で別の男の子供を出産した女との再婚 決意までに必要だった時間や勇気はどれほどのものだったのだろう。 本作品に書かれていない無数のドラマがあったに違いない。 この三人が家族となっていく過程をぜひ読みたいと思った。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/14
  • 投稿日:2021/12/16
エブリスタヒューマンドラマ連載:6話完結

とどかないクリスマスプレゼント

人間とは社会的な動物だといわれている。 他者との関係のなかでわたしたちは生きている。 なのに主人公木月は世間との関係性を断ち切って暮らしているという。 いったいどんな心持ちなのだろうかと想像してみる。 孤独であることは間違いない。薄れていくはずの記憶は反芻され、あより明確にコントラスト高く保存されていくのではないだろうか。 そんな暮らしを続けている木月のバイト中にひとつの小包が流れてくる。 作品紹介にいただいたメッセージ中に 「……復帰するというのはどういうことかということを考えて作りました」 とある。 ひとつの小さな小包が、木月と切れていた世間とをつなぎなおす。 復帰する、とはひとつひとつの関係を結びなおすということだ、と作者は考えたに違いない。 最後の劇場のエピソードはすべての創作者への力強い応援だ。 ひとつの小包がどんどん人と人をつないでいく美しい構成と、無駄のない文章をぜひ味わってほしい。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/23
  • 投稿日:2021/12/23
エブリスタ恋愛短編完結

Der Weihnachtsmarkt【クリスマスマーケット】

ドイツのクリスマスマーケットの美しい光に満ちた情景と、主人公がさまよう道の暗さをたっぷりと楽しんだ。 主人公がドイツ人の恋人との別れを決意したのは、自分が対等ではなく 愛玩動物のように愛されているのではないかという猜疑心から。 しかし、電話で帰国を促し日本で相応の大学院にいれてやる、という父親の言いぐさに従うことにはいささかも矛盾を感じていない。恋人の従属物であることは我慢できなくても、父親の従属物であることは受け入れるというこの精神の幼さ、依存心の強さこそ、日本人女性そのものだと感じた。だからウサギと呼ばれるのだがそこには気づかない。 ふらふらと帰国を決め、恋人に「愛している。もうウサギと呼ばない」といわれると唯々としてそれを受け入れる。 非常に面白い人物造形だと思う。主人公が愛玩動物をやめるのはいつか、よろめきから破壊へ移行するのかしないのか、そんな興味を持った。ぜひこの先を描いてほしい。 自立したいが結局庇護なくしては生きていけない、否を言えない女をはっきりと造形したのでなく、おそらくは父の言に従うことはさらっと書いてしまったのだと思われる。そこをマイナス0.5した。

4.5
  • 作品更新日:2021/12/4
  • 投稿日:2021/12/16
エブリスタ恋愛短編完結

祈るような恋をした。

極めて重厚な作品。 衝撃的な書き出しから捉えられ読み終わるまで離れることができなかったのはわたしだけではあるまい。 逆らえない運命のなかで、1分1秒でも長く一緒にいようと試行錯誤するふたりが愛おしく切ない。 試行錯誤するたびに恋人の死の瞬間と無惨な死体を見る、あるいは死を経験するたびに身体を引きちぎられる強烈な痛みと恐怖を感じなければならない。それでもふたりは一緒にいたいから挑戦を繰り返す。 この作品には結末が描かれていない。 きっとふたりの愛が奇跡を起こすと信じたい。 良作をありがとうございます。

5.0
  • 作品更新日:2021/11/30
  • 投稿日:2021/12/16
エブリスタヒューマンドラマ短編完結

12月17日、青春のひとゝき

12月17日、クリスマスイブまであと1週間。 そうだそうだ、プレゼントを用意しなくては、と焦りだす頃。お店も街も活気づく頃です。 ところで彼氏彼女へのプレゼントって聞くのも恥ずかしいし、でも変なものをあげちゃって嫌われたら大変だしって、頭を悩ませますよね。 そんな悩める彩ちゃんのために友人たちが一肌脱ぎます。 女子トークがとてもかわいらしいお話です。 これ以上はネタバレになるので書けません。 読んだ後に、ココアでも飲んだみたいに、ほんわかする作品です。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/17
  • 投稿日:2021/12/17