あたしはヒロインなのにっ! その言葉が母の口癖だった。 薄暗い牢の中、自分の名も知らずに、ただ生きていた。 意味の分からない言葉を繰り返す母と、狂ってしまった父と一緒に。 そんな、いつまで続くかわからないような日々は突然終わりを告げる。 突如正気を取り戻した父の凶行によって。 母に私を見てほしかった。 父に私を知ってもらいたかった。 ただそれだけを願っていただけなのに。 「やっぱりあたしはヒロインなのね!」 そのわけのわからない言葉を妹が叫んだ瞬間、私は唐突に理解した。 この人は私の母だった人だ、と。
更新:2016/5/20
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