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犬と老女と映画館

『記憶』がないことと『想い出』がないことは、決してイコールではない。

 人類は衰退の一途を辿り、荒涼とした世界に変貌した地球。  機械仕掛けの『犬』は、いまにも死んでしまいそうな『老婆』の願いを叶えるため、共に短い旅路を往きます。  どうして犬なのか。  どうして老婆に出逢ったのか。  どうして共に行動したのか。  どうして映画館なのか。  どうしてーー  一つずつ『どうして』という種が蒔かれ、丁寧に水を与えられて、それらが芽吹いた瞬間に気づいた事実に息が止まりました。  そして同時に、涙も溢れました。  犬がなにかに導かれるようにして向かった場所の意味。  老婆がずっと大切に持っていた物の意味。  ラストシーンは、魂が震える一つの絵画を見たかのように錯覚しました。  すべてが分かった上でもう一度読めば、最初に感じた景色と違ったものが見えるかもしれません。  すべてが儚くも美しい、心に残るSF短編です。 ◆  オノログ内で他の方々のレビューを拝見し、出逢えた素敵な作品です。  わずか5500字ほどの短編ながら起承転結が上手く、するりとその世界観に惹き込まれます。  台詞が少なくとも伝わってくるものがあり、むしろ台詞が少ないからこそ良いのだと思いました。  この物語の『核』となる部分を理解した瞬間から、私は涙が止まりませんでした。  もともと涙もろいこともありますが、この犬と老婆の旅路を鮮明に思い浮かべることができたからこそ、涙が溢れ出たのです。  とても強く、心に残る素敵な一作でした。

5.0
3
mochi*(読み専)

うらみ通りの藁人形<ストロー・ガール>

アナログサイバーパンク作品とでも言うべき、自律人形と人形師の街の物語

スチームパンクというか、ドールパンクな世界観な作品。けっこうダークで、残酷気味な描写もあったりする。 舞台となるのはペープサートという街。鉱山の街だった昔に、見つけられた謎の白い鉱石の研究から始まり、開発された、「神秘の箱」とも称されるエニグマレル。そのエニグマレルを利用して造られる自律人形たちがあちこちに馴染んでいる『世界一の人形の街』。 作中で発生する恐ろしい事件。人形と人形師たちの街に漂う、何か特異な感じなど、ミステリー的な雰囲気もわりとあると思う。 メインとなる人形が2体いて、結構アクション描写とかも多いので、わりとバディもの的な感じもあるかも。 自律人形の設定は興味深くよい。あの生物が苦手とか。 あと個人的には、この作品にはサイバーパンク的要素も(しかも強く)感じる。別にこの物語には電脳世界とか、ハイテクコンピューターのネットワークとかは多分出てこない(少なくともこれを書いてる時点までは出てきてない)。しかし、大なり小なり人間らしさを与えられた自律人形たちの描写には、脳科学(神経学)的に、あるいは意識や認識の哲学的に興味深いものがとても多い。 作中で、人形は結局しっかり人工的原理があり、つまり人形はあくまでも造られた存在とされる一方で、そうと言いきれるのか疑問なくらいに、まさに生きているかと思わせるような示唆もたくさんある訳である。 アナログサイバーパンクとでも言えようか。  涙を流す機能が付いていたら泣きじゃくってる。空腹という概念はない。味覚を持たせる技術はまだない。制作に金と時間をかけるほどに人形は人間に近づいていく。 エニグマレルの発明も、まさに生きた人形を造ろうとする人形師たちがたどり着いた究極形というような説明も作中にある。無機質なはずの人形に命を吹き込み心を与えてしまうものと。 そしてそうした情報の他、精度が低い、同じ言葉を繰り返したりするだけみたいな人形的人形の存在などが、現実のAIとかの発展に対して、我々が抱くような不安に近いもの(ようするに、人間は人間を作れるのかという疑問)も感じさせてくれる。 とにかく、生物の認識する現実、造られた生物の心などに関連している謎をいくつも問いかけられてる印象は強い。 他、細かな演出がまたいいです。 人形の会社グラン・ギニョール(一般的にこの名称は、20世紀前半くらいにフランスに実在した芝居、見世物小屋。さらにギニョールの由来は、指人形芝居の主人公人形のようです)。そのカタカナ名称が出てきた時点では出てこない、そのカタカナが当てられる印象深い漢字名称が、実際に会社か出てくる場面でようやく、という流れとか、とてもいい感じと思った。

5.0
0
シーフラン

マリオネットインテグレーター

少年よ、その剣で未来をひらけ。恋と願いが絡みあう救国冒険ファンタジー。

 新入り騎士の少年カートと人形遣いの魔導士ピアを中心として描かれる、謎と企みと、(主人公以外の)恋の三角関係がもつれあう冒険ファンタジーです。  丁寧な伏線と、人物それぞれの人間関係が、物語の味わいを深めていました。  冒頭で畳みかけるように事件が起き、年代が飛んで主人公が登場、という構成になっていますが、この事件それぞれが後の謎を解き明かすための鍵ともなってきます。  主人公カートが登場するのは第一章の第五話ですが、彼がとても良い子で可愛いのです……!  品行方正で礼儀正しく、目上の者に敬意を示し、理不尽な仕打ちにもじっと耐え、――と、正直この辺りで「我慢しちゃうの!?」という気持ちが湧いてくるのですが、カートのそういう姿勢が変化してゆくのも、この物語で描かれてゆく少年の『成長』だったりするわけです。  全体を通して、登場人物たちの言動や思想には理由があり、意味があり、終盤の謎解きターンで真相がぐいぐいと明らかになってゆくのが本当に面白い。謎と伏線も複雑すぎることはなく、適度な推理が楽しめます。  テーマのはっきりした物語でもありますから、読み進めていく中でふと手を止め、作中で問い掛けられることを考えてみるのもよいでしょう。  王道ながらもじっくり深く楽しめる、少年たちの成長物語。文庫本一冊程度の完結作品です。ぜひご一読ください。

5.0
0
眞城白歌

白銀の狼

ほんとの想いに気づいたら、戦え。悪意に立ち向かい、愛しき者を守るため。

 村のお荷物として蔑まれていた銀狼の少女と、村一番の強さを誇る黒狼の青年の、ひたむきで波乱に満ちた恋愛ファンタジー。  銀狼のレティリエは、狼の姿になれない女の子。彼女が恋する黒狼のグレイルは、村で一番強いと言われ将来を嘱望される青年。  力が全てとされる人狼の村では、狩りに加われないレティリエの想いは口にすることさえ許されないものでした。  祭りの日、レティリエは村のすぐ側まで来ていた人間たちに捕まってしまいます。異変に気づいたグレイルが助けようと追いかけるものの、大怪我を負わされ、彼もまた捕まってしまい――。  見どころは、主人公であるレティリエの勇気と知恵、そして後半になるにつれ磨かれてゆく演技力でしょう。想いびとであるグレイルは身体も大きく強い狼ですが、それでも人間たちによって追い詰められてしまいます。  度重なる窮地を、レティリエがどう切り抜けてゆくか。彼女につらく当たってきた村の狼たちにどう向き合っていくか。後半の展開には心を揺さぶられます。  作中では、狼社会の価値観と、他種族の価値観、そして人間社会の価値観が、繰り返し対比されます。特に、人間側が人狼(や亜人種族たち)を獣やペットとしか見ないゆえの対立構造が徹底的に貫かれていきます。  人狼と人間、両者の心は一切重なり合わず、それゆえにレティリエは一人きりで戦うしかありません。しかしその戦いは、彼女自身が自分の価値を知る切っ掛けでもあります。  グレイルは元より好青年なのですが、狼社会の風習を疑問に思わなかった彼も村の外の価値観に触れることで、少しずつ変化してゆくのです。  シンプルなストーリーで過不足ない描写、魅力的なメインキャラとブレない悪役たち。  躍動感あふれる物語です。ぜひご一読ください。

5.0
0
眞城白歌

無欲の聖女は金にときめく

入れ替わり物の中でも主人公を応援したくなる度ナンバーワン! 勘違い物の傑作!

孤児院で過ごす守銭奴の主人公が、ある日貴族の落胤として平民として自由に生活していた女の子が、どうしても貴族に見つからないよう体をバッタと入れ替えようとしていたところに遭遇してしまい、間違って自分と女の子が入れ替わってしまいます。 お金につられてしばし入れ替わって生活することに了承するものの、暴言も封印された為その外見から貴族の人たちにはとんでもない勘違いをされてしまう、と言うのが大まかなあらすじです。 12歳の少年である主人公は守銭奴ですが精神的に幼いのもあって女の子になったからと言って特に性差による戸惑いはありませんので、そのあたりのTS要素が苦手な人にもおすすめです。 主人公は孤児たちの面倒見もいいとてもいいやつで、女の子の祖父母たちに優しくされて嬉しくなりつつ自分の物じゃないのにと苦悩したりもしますが、基本的にお馬鹿でお金に目がなく図太いので明るく物語はすすむのですが、その分周りの人たちの勘違いとの落差がひどいです。 勘違い物の醍醐味である他者視点が楽しく、あまりにひどい落差なのですが主人公がいいやつなのは事実なので妙な笑いを誘います。それでいてひどい茶番なのに泣けたりもするのが、作者の力量の高さを実感させられます。 とにかく勘違い物、他者視点との落差が好きな人には絶対にヒットします。主人公自身も中身が下町の少年なのもあり様々な勘違いをしてもうしっちゃかめっちゃのメチャクチャ面白い物語です。 全編笑えて、それでいて要所要所でしっかり泣ける、いい人ばかりでみんな幸せになるほっこり優しい勘違い物、是非一読ください!

5.0
1
かんむり

【電子書籍&POD化決定】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~

等身大の女の子が更生して自力で幸せを掴む、やり直し物語の中でも最高傑作! 

現代舞台による婚約破棄されたデブでブスで勉強もできないし家の会社も大暴落したところから始まるやり直しの物語。 主人公は確かに性格が悪いのですが、行動力があり自分で更生しようと決めてからは素直に努力することができる人間です。 一番最初のテンプレのような他の女の子を突き落としたな!シーンも自分の身の幅がわかってなくてお尻がぶつかったとか笑ってしまいました。三十キロ以上太るから……。 そんな感じで婚約することで増長しなければ元は可愛く思いやりもある女の子なので、自分を性格ブスだからと戒めながら頑張るところに応援したくなってしまいます。 やり直しと言っても高校生から中学入学時に戻るので、周りに大人ぶりながらもまだまだ子供の素人口が自分の失敗と真面目に向き合い、嫌いだった相手にも向き合って成長していく姿は時に涙も誘います。 色んな人と仲良くなって、いろんな経験をしていくのを保護者気分ではらはらしつつ見守っていくのがとても楽しいです。 友達も主人公に思いを寄せる男の子たちもそれぞれ違った魅力があり、どれも主役をはれるような人ばかり。恋愛物としても誰を選ぶのかわくわくし、また恋をしたあともじれじれしつつ少しずつ進展していく様が面白く、恋愛物好きな人や女の子が頑張る話が好きな人にはぜひおすすめです。

5.0
1
かんむり

【完結】地球の玄関口

【連載中】これぞまさしく異文化交流! ありとあらゆる異文化がここにはある!

宇宙人の襲来により開国した地球。宇宙人が降り立つ空港としての窓口に選ばれたイギリスと日本の、日本側の入国受付窓口職員主観による異文化交流の話です。 宇宙人がどんどん色んな目的でやってくるのですが、国が違う以上に様々な人達がやってきてとんでもない異文化交流が日夜繰り広げられます。 ほんの数ページで目まぐるしいほどどんどん別の惑星からやってきます。作者の頭の中はどうなっているのかと思うほど様々な種族や思考が入り乱れ、びっくり箱を開け続ける様にどんどん飛んでも種族たちが騒々しく、時に淡々とやってきます。 なにせ生物としての生態系も全く違うので、日本にありふれたものが宇宙人の体にとんでもない影響を与えたりと予想もつかないことばかり起こります。 様々な設定が自然に組み合っていて、設定だけでも楽しいですし、主人公のひょうひょうとした性格も合わさってさくさく進む展開に夢中で読んでしまいます。 また同僚である異星人との恋愛要素もあり、異文化交流好きにはとにかくたまらない作品です。 現在未完結なので星四にしておきます。

4.0
0
かんむり

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