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作者:機動戦士ガンジス

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作:機動戦士ガンジス

サバイ婆ちゃん

 誰一人見舞いのこない病室で、彼女は虚ろな瞳で白い天井を見つめている。  お迎えを待ちわびながら、これまでの人生を振り返る──『長生きしたい』と初めて強く思ったのは、一体いつの事だっただろうか。  多分、戦争よりもっと前。  彼女は農家の末娘で、いつもお腹をすかせていて──ああ、そうだ。一度酷い飢饉があって、餓えと病で死にかけて、なんとか命を拾って以来、そのことばかり考えた。  雪山、砂漠、ジャングルに戦場──いつだって彼女は生き延びてた。そのたびに味わう生の強い実感が、何より彼女は好きだった。  だがそれももう限界──老いさらばえた身も心も、タナトスに心惹かれ続けている。夫は先立ち、息子や娘は無事に巣立った。だからもう、いいのでは? 存念があるとすれば、末の孫のユキミチか。  14歳。多感な時期だ。  もう何年も会っていないが、少しは立派になっただろうか、それとも道を誤っただろうか。  まだ死ねないと、強く思った。  だから彼女は考える。生き延びる方法を──摂理に背く反抗を。  やがて一つの推論が、彼女の中で組み上がる。  なんだ、まだあるではないか。どんな過酷な環境でも、絶対に死なない方法が。何故今まで気づかなかったのか。これが耄碌というものか。  苦笑を一つ浮かべると、それまでの弱りっぷりもどこへやら、彼女は布団を跳ね除けた。  双眸に生と餓えとを滾らせて、無断で病院を後にする。  全てはただ、生き抜くために──末法の世まで生き抜くために。 ──そして彼女は、永遠になった。 第二回サワムラ杯参加作品。

更新:2016/2/27

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