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雨の音色

すこしだけ見方を変えると、世界も変わるかもしれない。

〈小野がゆっくりと右のリールを回すと、編集機の画面には雨の風景が映し出された。雨の街並み。水たまりの波紋。そして、雨粒に頭を揺らす草むらの葉っぱたち──。〉  同じひとを、同じ光景を見ても、すこしだけ見方を変える、あるいは新たな視点をすこしだけ取り入れてみると、それまで眺めていた世界はまるで違って見えたりする時、ってありませんか。本作は、そんな感覚を再認識させてくれるような、読み終わった後、読者自身も、いままで見ていた景色が違って見えるかもしれない、そんな気持ちになる作品です。  県でも有数の強豪女子バスケ部に所属する〈私〉は、恋愛よりもバスケ、という筋金入りのバスケ女子で、これまでも男子からの告白は断っていたのだが、「なあ清水、シュウがお前のこと好きなんだって」と本人ではなく(本人さえも予期していなかった)別のクラスメートを伝って耳にしたシュウこと小野修二の間接的な告白だけは、どうも尾が引いてしまった。どうも彼のことが気に掛かり、〈私〉は映画好きの彼が以前話していた『シェーン』を観ることにして……、  穏やかなトーンで綴られるふたりの距離感の変化に惹き込まれ、感情の揺らぎに寄り添わせて、爽やかな余韻とともに物語は幕を閉じます。  たとえばこの作品においては『シェーン』がそれになるわけですが、物語が別の物語に繋がっていく(作中で言及されている作品が読みたくなる、観たくなる)作品なのも、個人的にはとても嬉しい。

5.0
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サトウ・レン

僕に優しくない世界

果てに待つ光景は――。

 とても素敵な掌編に出会ってしまった……のですが、本作をネタバレなしで書くのは難しい。でも、この作品は事前情報は持たずに読むほうが絶対良いタイプの作品だと思います。なので、できるなら、まず本作を読んでから、こちらに戻ってくるのをお薦めします。  ネタバレフィルタは付けましたが、今回はすべて明かすわけではなく、多少踏み込みつつも、できる限りネタバレには気を付けながら書きますが、たぶん勘の良いひとはちょっとの情報で構成、展開を察してしまうかもしれない。だから、もう一度言いますが、まず本作を読んでから、こちらに戻ってくるのを強くお薦めします。  良いですね。後で絶対に文句は言わないでくださいね。 〈桐島蝶子(ルビ きりしまちょうこ)、僕の彼女だ。……と言っても最近付き合ったばかりなので、「画家の卵なんて」といつ愛想をつかされないか、毎日冷や冷やしている。彼女持ちであると胸を張れない僕は、蝶子さんが言う通りの心配性なのだろう。〉  本作は〈現実〉という空虚さを嗤うように、あいまいさの上で成り立つ虚構の魅力に満ちた物語です。後書きにて、作者さん自身が〈泡沫〉という言葉に想を得たと書いていますが、いま見ている光景は本当に確かなものなんだろうか、と読者と語り手は物語の途中から不安な感覚を共有していく中で、まさしく泡沫の夢という情景が弾け、驚きとともに浮かび上がる〈確かに(見える)〉世界。でも……その〈確かに(見える)〉世界こそが泡沫の夢、あるいはそれまでと地続きにある世界の中……なのかもしれない、と世界は揺らいだまま、幕だけが閉じていく。素晴らしく好みの作品です。  読後、ふと蝶子の名前のモデルについて考えてしまいました。確信犯なんだろうなぁ、と思いつつ、読後の余韻を楽しみながら、このレビューは終わらせることにします。

5.0
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サトウ・レン

おばあちゃんの落とし物

「落とし物」は、なんですか?

 高齢化の進む郊外の田舎町、派手な事件も滅多に起こらない町の交番に勤務する警官の〈僕〉のもとに、ふらりと吉岡のおばあちゃんが「落とし物」をした、とやって来る。吉岡のおばあちゃんはこの町に住む独居老人の一人で、少し痴呆が出ていて、だけど足取りはしっかりしている、そんな彼女の姿がどことなく自身の祖母に似ている気がして、〈僕〉が他の人より気に掛けている住人だった。特に心当たりもなかった〈僕〉に「落とし物が届けられたら、教えて下さい」と吉岡のおばあちゃんは帰っていき、それから日も待たない内に彼女はまた「落とし物」が来ていないか、と尋ねにきて、それ以降は毎日のように今度は落とし物があったと軍手を拾って(それも毎回)、自分の「落とし物」がなかったか、と交番を訪れるようになる。彼女の「落とし物」って何だろう……、本当に「落とし物」なんてしたのかな……、そんな不思議な日が一週間くらい続いた頃、〈僕〉たちの交番に、強盗事件の捜査で県警の人がやって来て……、というのが物語の導入。  ネタバレフィルタは付けましたが、事前情報を持たずに読んだほうが楽しめるタイプの作品だと思いますので、ぜひ作品のほうをまず読んでいただければ、と思います。  いつまでも纏わり続ける恐怖というものがあります。  どれだけ忘れようと努めても、忘れた気になっていても、片隅には残って消えないままの記憶が、ふいによみがえる。本作の登場人物が恐れる過去と同じ経験した者でなくても(すくなくともこれを読んでいるひとの中にはいない、と思います。……えっ、いないよね……)、恐れる過去、忘れたつもりにしている記憶を抱えた者は多いでしょう。そんなひとの心の触れて欲しくない部分に触れるように、他人事ができず自分事となっていく、そんな感情自体はどこにでもある、身近な、とても怖い物語だ、と思いました。結末には寂寥感が余韻として残る、ほのかな幻想味もあって、個人的な嗜好も含めてとても好きな作品です。

5.0
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サトウ・レン

零時になったら、世界を変えよう

静かな余韻が残る逸品。

 午前零時、アプリ「零時のイルカ」に見せられる夢の中では、夜のみ開かれるカフェが開かれていて、年齢も性別も違えど、昼間の世界に生きづらさ感じる人達が思い思いに過ごしている。たんぽぽさんこと高校生の〈私〉はいつものようにここを訪れて、そこには管理AIのイルカさんがいて、見知った顔がある。でも知り合った人たちがいつまでもここにいるとは限らない。「零時のイルカ」は、生きづらさを抱えた者たちの生と死の境界にありながら、死を選んだ人達が最後に羽を休める場所としての役割を持つからだ。そして彼らは、後へと続く者達に同じ道を歩まないで済むように願いを託していく。  ネタバレはせずに書きますが、私の文章を読むより、ぜひ作品のほうを読んでもらいたいものです。  例えば、あなたは〈正しさ〉に心が呼吸を止めそうになったことがありますか?  硝子細工のように繊細な感情を揺らしながら、語り手が自身を見つめていく本作は、息が苦しくなるようなその感覚を持つひとにとっては心を寄り添わせたくなり、その感覚を経験していないひとなら新たな視野が広がるだろう、落ち着いた語りの、懐の広い物語になっています。なぜ死に、なぜ生きるのか、多くのひとが考え、多くの物語の中で描かれながら、どれだけの時間を経ようとそのための言葉が紡がれ続けるのは、誰もが納得できる誰かの答えが存在しないからでしょう。誰かにとって大切な誰かの答え(本作において、それは語り手になります)としての〈生〉と〈死〉への想いが浮かび上がってくるからこそ、胸を打たれるのかもしれません。私はそんな風に思いました。  静かな余韻が残る逸品です。

5.0
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サトウ・レン

待合室とおじさんと私

昭和の終わりの夏、無人駅にて。

 ネタバレはしないつもりですが、ぜひまずは作品のほうを触れていただくと、より切れ味の鋭い短編の面白さが味わえるのではないか、と思います。  うるさいセミの声が聞こえる、ある八月の夏。    最寄りの無人駅に足を運んだ〈私〉は、待合室にひとり座る〈おじさん〉と出会う。外見は三十代から四十代前半くらいだろう若白髪の彼は、役場の住民課に働く、村一番の美人と村では知られたユカリさんの婚約者として訪れていて、村では話題の人物になっている。そんな彼にユカリさんの話を聞くと、彼は話を変えるように、かつて悪いことをしたひとを落としていた〈底なし沼〉の話をはじめる……、  というのが本作の導入で、昭和から平成へと移り変わる時代の、〈少女〉と〈おじさん〉のどこか郷愁もかいま見えるひと夏の邂逅はすこしずつ色を変えていきます。  結末に立ち上がってくる残酷なヴィジョンに思わずぞっとしてしまう、奇妙な怖さのある作品なのですが、ただ序盤で感じていた違和感の正体が徐々に明かされていくミステリ的な面白さもあり、このふたつのジャンルが好きなひとには、ぜひおすすめしたい内容になっています。そして淡々とした語り手の視点を通して語られる、村の閉鎖的な雰囲気も、作中に漂う不穏な感じを盛り立てていて、さらに恐怖が増していくのが嬉しい。

5.0
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サトウ・レン

赤い絵筆

輝いて見えた新たな日常は、静かに崩れ去っていく――。

 冬が訪れて間もない十二月のこと、美術部員の鳳優美は、同じ美術部員だがそれまで一度もしゃべったことのなかった沢野友梨奈から、絵が綺麗で繊細だと褒められ、その会話をきっかけに連絡先を交換し、徐々に友好を深めていく。対照的なふたりが関わり合うになっていく中で、小中高と友達と呼べる存在がおらず、過去に暗いものを抱える優美は、楽しさを覚えつつも、自身の暗い部分が負い目になり、罪悪感に耐え切れずに自身のその一面を明かした優美に対して、友梨奈は受け入れてくれて――、  というのが本作の導入。ネタバレありのフィルターは付けましたが、特に後半の展開については知らずに読んだほうが楽しめる内容になっている、と思うので、まだ作品を読んでいないかたは、まず作品のほうへ、ぜひとも。このレビューでも結末については明かしませんが、それでも事前の情報はすくないほうが良さそうです。  作品は読みましたか?  物語の中盤までは、濃密な文体で光と影のような友情が育まれていく様子が描かれていき、優美が友梨奈に静かに寄り添っていく姿はほほ笑ましくもあるのですが、すこしずつ物語は歪さを孕んでいきます。輝いて見えた新たな日常が、静かに崩れ去っていくように。これはとても怖い物語だ、と思います。そもそもこの作品のジャンルはホラーですからね。でもその恐怖、というのは、びっくり箱的な驚かしではなく(これも好きなんですけどね)、自分の人生、あるいは周囲の人生にあってもおかしくなさそうな、身近な思わず自分事にしてしまいそうな怖さなんです。  でも……、  客観的に見れば歪にしか見えない光景も、当事者たちにとってはまったく違って見えてくる。愛憎相半ばした感情が噴き出した先に残酷な景色と悲劇があり、でも恐怖とともに読後、私の胸に残ったのは切なさでした。どれだけ歪んで見えようとも、そのひとにとっては一途な想いの表れだ、とそれまでに綴られた物語の中で、読者はすでに知ってしまっているからなのかもしれません。

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サトウ・レン

ロンドンの疾風-メッセンジャーボーイの謎解き―

19世紀末、謎、友情。

 ネタバレはしないつもりですが、未読の方はご注意を。  まだ電信機器が未発達だった19世紀末ロンドンの夜、ローラースケートで街中を縦横無尽に走り回る少年たちの姿があった。彼らは情報伝達の役目を果たすメッセンジャーボーイズ、その職に就いて半年の新参者である14歳のエドガー・タッカーには憧れ尊敬するメッセンジャーボーイがいた。ヒュー・バード。きょうもロンドンの夜を疾走していたふたりが、在野の宗教・聖書研究家であり、変わり者と言われているルパート・シーモア氏の宅を訪ねると、どうも様子がおかしい。鍵の掛かっていないその家に入ると、仰向けになった全裸のシーモア氏が死んでいた。ナイフが胸に突き刺さった状態で。机の上には紙片が一枚あり、シーモア氏が力尽きる寸前に書き残したと思わしき、 〈 宝 盗まれた だがニセモノ ニセモノを持つ者が 殺人者――〉  という文章が――。  というのが導入の、本作は19世紀末ロンドンを舞台にした青春ミステリです。深い知識に裏打ちされた謎解きと、物語の中でさらに深まっていく友情と、最後まで爽やかで心地の良い余韻が残ります。作者のsanpoさんのミステリをいままでにいくつか読ませて頂いたのですが、それらに共通して抱いたのが、物語、あるいはミステリに出会った頃の原体験に立ち戻っていくような懐かしさ、でした。  物語を通して、いままで知らなかった世界を知っていく、視野が広がっていくような感覚、と言ったらいいのでしょうか。物語の入り口にどんな作品が良いか、っていうのは、ひとそれぞれで、一概には言えない、とは思いますが、私にとってはこういう物語だったら嬉しかっただろうなぁ、と思ってしまうタイプの作品です。二転三転する先の読めない展開、丁寧に張られた伏線と、秀逸なミステリ作品なので、ミステリ好きにはまずお薦めしたいですし、19世紀末のロンドンの街を疾走する(読者がかつての都市を冒険しているような)冒険譚的な面白さや探偵行を続けるふたりの少年の友情と軽快な会話を楽しむ青春小説としても、とても印象的なので、ぜひ幅広い方に読んで欲しいな、と思う作品でした。

5.0
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サトウ・レン

呪いのメイズさん

少女の成長と友情を描く青春ホラー

 もし恐怖がひとを変える力を持つとしたら、  これは、恐怖、という体験を通してひとりの少女が勇敢さを得ていく物語です。  今回はネタバレは避けながらのレビューにはなりますが、それでも事前情報を得ることで作品に対する印象が変わる場合もあるとは思うので、未読の方はご注意ください。  転校初日、〈わたし〉こと瀬戸深月は変な夢を見る。彷徨った生垣の迷路の先に見つけた洋風の立派なお屋敷、その庭に小学生三、四年生くらいの幼い女の子がいて、メイズと名乗った女の子に友達になって欲しい、と言われる夢だ。そして新しい中学校生活がはじまる中で、〈わたし〉はクラスの中心的存在である宮島真珠からこの辺りで知られる変わった占いについて教えられる。質問に答えてくれるメイズさんの占い。夢に出てきた女の子と同じ名前だった。以降、〈わたし〉は道案内に、テストの答えに、とメイズさんの占いに頼るたびに、その占いは未来のことまで百発百中になりクラスから一目を置かれるようになり、不審に思った真珠から問い詰められて……、  と本作の導入はこんな感じで、「メイズさんの占い」という言葉だけを聞くととても可愛らしいですが、徐々に表していくメイズさんの本性は、とてつもなく怖い。  中盤以降、容赦のない恐怖が展開されていくので、あんまり怖いのは……、という向きには気軽に薦められませんが、その代わりホラーと聞くと涎が出る向きには、こんな文章を読んでいる暇があったら、さっさと作品へ行け、と言いたくなる内容になっています。途中から、深月とメイズさんとの意外な関わりやメイズさんの起源が明るみになっていくことで、ぼやけていた輪郭がくっきりしてきて怖さが増してくるような感覚があります。  そしてホラーの怖さを盛り上げる要素として、この作品には人間関係の魅力もあるのですが、登場人物同士の距離感やパワーバランスが事件や出来事によって歪に変化し、元ある形が崩れていく様が、胃がきりきりとしてきて、この嫌な感じが素晴らしい(褒め言葉です)。  ただそんな恐怖と嫌悪の果てに、ひとりの少女が友情を育みながら、成長していく姿があり、青春の物語として後味の良さが残るのもすごく心地良くて、怖いのが大丈夫なひとならば、ぜひとも読んで欲しい作品です。

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サトウ・レン

清の千年物語

清少納言、現代を歩く。

 これはすごい。すごいぞ。素晴らしい作品だ……、と一気読みしたのち、その興奮がまだ覚めもしないうちに、気付けば応援レビューの画面(※ノベルアップ+での初読時の話です)を開いてしまったのですが、そこで手が止まってしまった。どう、この魅力を伝えればいいのだろうか。困った……。  事前に知らないほうがいい部分にも言及しようと思ったので、今回はネタバレありとしましたが、知らずに読んだほうが絶対に楽しい作品だと思うので、ぜひこの文章を読む前に実際の作品に触れていただけたら、と思います。  本作の主人公は「枕草子」の作者として知られる清少納言……と言っても歴史小説ではなく、彼女は二十歳の姿のまま現代を生きている。二十歳のまま不老不死となり、病気はすぐ治るし、手首を斬り落とされても死なず、千年の時を経ながら現代社会に溶け込む女子大生の清少納言が「清の千年物語」というブログを綴る、というSF中編なのです。清少納言がブログを書き、大学生活を楽しみ、司馬遼太郎を愛読する……というのはなんとも不思議な感じがしますね。ただブログという体裁を取っているので、もしかしたら清少納言の振りをした別の誰か、と読み方ができるのも楽しい。  本作は深い知識に裏打ちされたとても豊穣なフィクションです。日常を綴るというテイストだけでは終わらない物語としての色を強める展開もあり、そこについてこのレビューでは明かしませんが、実際には清少納言が紫式部とは面識がなかった、と言われているらしくて、またそのことが本作の導入に書かれているのですが、そんな物語にささやかな色を添えるための文章に思えた設定が、後半になって活きてくる内容になっています。  えっ、まだ読んでいない? では想像の旅へと行ってらっしゃい。

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サトウ・レン

飴屋

死と飴玉をめぐる幻想譚

 細い路地の突き当たりの雑居ビルの階段を地下へとくだっていくと、そこには木製の扉に金属プレートで『飴屋』と彫られた店がある。そこには店番と思わしき小学生くらいの年頃の三つ編みの女がいて、と、なんとなく怪しい雰囲気ですが、それだけではなく、店内にはずらりと試験管が並んでいて、底には眼球……ではなく眼球にしか見えないような飴玉が入っている。それを口に入れた時、映し出される光景は死者の最期の記憶、そしてそれを追体験させられた者たちは、それぞれその死の真実に対して様々な感情を抱く……。  ということで本作は、生者が本来なら絶対に体験することのできないリアルな〈死〉を追体験させる飴玉をめぐるファンタジックな連作ホラーなのですが、その不思議なヴィジョンによって展開されていく人間ドラマの要素も印象的な作品でした。死者の記憶を見せる飴玉、という設定は同じにしながらも、それぞれの短編の趣きはばらばらで、怪談的な話もあれば、人間心理の嫌な感じを煮詰めた作品もあるし、切ない想いが喚起されるような作品もあって、そのヴァリエーションの多さにも驚いてしまいますが、設定の使い方で秀逸だな、と感じたのが最終話の「ムシノネ」で、今回はネタバレはしないつもりなので、詳細については言及しませんが、それまでのこの世界に対する思い込みもひっくり返すような内容になっていて素晴らしかったです。  もちろん個々が独立した短編としても、とても面白いのですが、物語同士の繋がりを楽しめるのも、連作ならでは、という感じで、エピソードの中に別のエピソードが混じっていくことに気付かされる読み心地はミステリやサスペンスを読む愉しみにも似ていて、それらのジャンルが好きな方にもぜひおすすめしたい、と思うような作品になっています。素晴らしい作品に出会えた、と読後、感嘆の息が出ました……。

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サトウ・レン

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