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作者:結城暁

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作:結城暁

推しの幸せを見届けるまで死ねない

九重好永は恋愛SLG「運命の庭~ジャルダン学園物語~」通称ジャル学の悪役令嬢リュディヴィーヌ・ルモワーニュが好きだった。それはもう好きだった。愛していた。 しかし、彼女は悪役令嬢故にゲーム本編で死んでしまう。一縷の望みに賭けてファンディスクのエピソードを100%にするが、彼女の姿形どころか影すらもなかった。絶望しつつ、制作会社の株を取得するため金を貯める日々。そんな社畜生活を送る好永の元にオタク仲間の従兄弟から連絡が届く。 『知り合ったゲー友が脚本家で、ジャル学の裏設定教えてくれるって!』 好永は走った。深夜に近い時間帯だったが、体調が悪かったが、走った。最速で待ち合わせ場所まで行くために。駅のホームまであと少し、この階段を登り切れば、と階段を駆け上る彼女の前になんとも意地悪そうな中年オヤジが階段を降りてきたが、彼女は華麗にその中年を避けた。──はずだった。その中年は避けた好永の進行方向にわざわざ移動してきたのだ。ご丁寧にも中年は肩を好永にぶつけるため構えていた。この野郎、当たり屋か、と避け切れず好永は中年に体当たりを食らってしまい、後ろに弾かれた。なんのこれしき。階段へ着地しようと踏ん張った足元から嫌な音がする。推しカラーのヒールが折れる音だ。なんてこったい、推しの色をしていたから買ったお気に入りの品が。自分の迂闊さから壊してしまうなんて。クソオヤジの顔を覚えた好永は訴えて勝つことを心に決めた。治療費はもちろん慰謝料を踏んだくって新たな推しカラーを手に入れてやる。後頭部に鈍い衝撃を感じたのを最後に好永の意識は閉じた。

更新:2024/3/6

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