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作:缶頭

砲弾と缶詰、胃に収め。

1943年、独ソ戦が始まってから3回目の夏に転機は訪れた。祖国は彼に栄光あるソヴィエト軍戦車兵としての勇気、剛胆、そして大衆的英雄精神を発揮することを望んでいる。しかし派手な撃ち合いだけが戦車兵の仕事ではない。我々の真の仕事と言えば、来る日も来る日もグリスで指をベタベタにし、エアフィルターをジャブジャブ洗い、燃料タンクに油を注いで、食い物を腹に収めることばかり。戦車はすぐにガタが来る、撃ち合う前に落伍する。ようやく前線にたどり着いたところに待ち受けるは宿敵ドイツ軍。極め付けは、戦車のクルーとして配属された年端もいかぬ少女達。敵弾は当たる相手を選り好みしない。果たしてこれで戦争になるのか。生き延びる事は出来るのか。いやいや、そんなことはどうでもいい。前を見てみたまえ。鉄が軋み、鋼が泣き叫ぶ。泥と土を泡立てて作られた戦場に焼けた鉛の雨が降る。キューポラの彼方に戦場が見える。そうだ戦場だ。これが戦いというものだ。しかし今更どうして退けようか? 砲兵が陣地を耕し、歩兵が駆け出す。最早覚悟を決めるしかあるまい。戦車、前進。

更新:2013/4/17

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