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作:うり北 うりこ

【連載版】ドアマット聖女に花束を~虐げられた聖女が心を閉ざした時、聖女の中の人は旅に出る~

 伯爵令嬢アメリアの人生は散々なものだ。  両親はアメリアに興味がなく、母親は男と家を出ていった。父である伯爵はアメリアの母が出ていくと、すぐに浮気相手を後妻を迎えた。  新しい母親にはアメリアと同い年のカタリナという娘がいて、カタリナは何でも「欲しい、欲しい」とアメリアのものを奪ってしまう。  悲惨な幼少期を終える頃には、アメリアは声を失っていた。機能的には問題ないものの、精神的なもので出なくなったのだ。  そんなアメリアの様子を、私はアメリアの中からずっと見ていた。  何度も助けようとした。アメリアの中にいるのだから、つらい時は交代をしたいと願った。  けれど、それも叶わない。  だが、転機が訪れる。アメリアは聖女の力に目覚めたのだ。第二王子ミュゲルと婚約をし、やっとアメリアが幸せになれる。  そう思ったのに、今度はカタリナが城へとやって来るように。  そして、カタリナは窓からアメリアを突き落とした。 「バイバイ、お姉様。ミュゲル様とは、私が代わりに結婚してあげるからね」  そう言って、笑いながら。  目が覚めた時、アメリアを待っていたのはひどい現実だった。  アメリアは心を閉ざし、私はアメリアと入れ替わった。  なんてことだ。こんなに心優しく美しいアメリアに、すべてのことが優しくない。  こんな国なんて、捨ててしまおう。  旅に出るんだ。  たくさんの美しいものが、楽しいことが、この世の中にはきっとあるから。  この世の美しいものをアメリアに届けよう。  いつかまた、表に出てきてくれるように。  その時、私はどうなったってかまわないから──。

更新:2024/5/19

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